研究課題/領域番号 |
16K05287
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
須田 拓馬 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (90374735)
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研究分担者 |
森谷 友由希 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (60722949)
茂山 俊和 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (70211951)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 超新星 / 恒星進化 / 元素合成 / 金属欠乏星 / 化学進化 / 大質量星 / 連星探査 |
研究実績の概要 |
本研究の主要テーマである、重力崩壊型(II型)超新星爆発の爆風を受けた超金属欠乏星の表面に爆風の残骸が降着する影響及び、恒星表面のリチウムが減少する可能性について検討してきた。汎用メッシュシミュレーションコードであるFLASHを用いてIa型超新星と低質量星の相互作用を計算し、低質量星表面の剥離とIa型超新星によって合成された元素の一部が降着することを確認した。この数値計算をII型超新星爆発と低質量星との相互作用にも適用し、恒星表面の重力ポテンシャルと爆風の運動エネルギーが釣り合う距離よりも近い位置で爆風が当たると、恒星表面のリチウム層が剥離されることを確認した。このような至近距離での爆風の直撃が起こる可能性について検討するために大質量金属欠乏星、および初代星の進化を計算し、先行研究と同様の結果になりそうであることを確認した。さらに、このような連星が存在可能であるかを検証するために、太陽近傍にあるOB型星の視線速度変動を測定し、大質量星と低質量星からなる連星系の探査を開始した。これまでに3件の観測提案が採択され、なゆた望遠鏡で8晩、岡山188cm望遠鏡で6晩の観測時間を獲得するとともに、ぐんま天文台の協力も得て14天体の観測を実施し、複数の観測期間にまたがる視線速度の変動について解析を開始した。理論モデルから予測される金属欠乏星表面のリチウム元素組成が観測データを再現するかどうかを比較するために、SAGAデータベースを整備し、データの更新と検索機能の改良を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超新星爆発と低質量星との相互作用を明らかにすべく、Ia型超新星と低質量星との相互作用、およびII型超新星と低質量星との相互作用を二次元の数値シミュレーションを行った。前者の場合についてはすでに解析を終え、論文として投稿する準備ができている。後者については、FLASHのような汎用数値計算コードでは膨大な計算領域が必要であり、今年度では限定された状況での数値計算を行うに止まったが、実際に計算を行うことができたので、今後の研究の方向性の目処が立った。大質量の進化計算では、想定していなかった内部混合と、それに伴う爆発的な元素合成が起こったために計算が途中で破綻してしまったが、これは金属欠乏星に特有な現象であることが判明し、金属欠乏星でのリチウム減少が金属欠乏星の進化と関連している可能性がより確かなものとなった。この物質混合が異なる恒星進化コードでも起こることも確認したため、今後はこの現象が報告されていない先行研究との詳細な比較を行うという必要がある。視線速度変動のモニタリング観測は、これまでのところあまり天候には恵まれておらずデータの取得がそれほど順調ではないが、観測夜数の確保が十分にできているため、観測を継続することによって連星の確認が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
II型超新星と低質量星の相互作用を計算するには、FLASHコードによる数値計算では限界があるため、SPH法による数値計算を試みる。SPHシミュレーションの専門家と連絡を取り、同様のセットアップでの計算で協力を得ることができることとなり、計算領域の確保の問題が解消される見込みである。大質量星の進化計算では、炭素燃焼開始後から重力崩壊までの間の進化をどう追跡するか、物質混合による爆発的元素合成をどのように収束させるか、あるいは回避するかを検討する必要がある。炭素燃焼後の進化のタイムスケールは非常に短いので、爆発までの進化をすべて追う必要はないが、先行研究との比較を通じて妥当な計算結果を確保できるよう努める。また、物質混合は対流層の移動によって起こるので、数値的な取扱いの調整によって計算の精度を損なうことなく計算を進めることができると見込んでいる。なゆた望遠鏡、およびぐんま天文台望遠鏡による観測を継続して行う予定である。岡山188cm望遠鏡の共同利用観測が2017年度で終了するため継続観測の申請はできなくなるが、今後はすばる望遠鏡のサービス観測など、他の観測装置を用いた観測を継続する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた外国出張を取りやめざるを得なくなったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の研究の進展が順調であったこと、および次年度では研究成果の発表機会が増える見込みであることを勘案して、旅費として計上する予定である。
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