研究課題
Ia型超新星の進化経路を理解する上で鍵となる天体、アンドロメダ銀河の1年周期の回帰新星 M31N 2008-12a の詳細な爆発モデルを構築し、古典新星の距離決定に重要な役割を果たす、古典新星の色-等級図の理論的モデルを作成した。Ia型超新星爆発直前の親星がどのような天体であるかは未だに特定されていない。大きく分けて、白色矮星と通常の星の連星系(SDと略)か、二つの白色矮星の合体(DDと略)か、といわれている。このSDの代表的な天体が、10年から100年程度の周期で爆発する回帰新星である。周期が短いほど、白色矮星の質量が大きい。1年周期は、Ia型超新星として爆発すると考えられている質量、1.38倍の太陽質量に近い。1年周期は、今まで発見されたものの中では最短周期であり、Ia型超新星爆発直前の天体と考えられている。この天体の理論的モデルを構築し、白色矮星質量がほぼ1.38倍太陽質量であること、新星爆発のたびに、伴星から供給されて積もったガスの約40%が放出されるが、残りの60%は水素核融合の結果、ヘリウムとなり積もることを示すことができた。したがって、この天体は、1年ごとの新星爆発により、伴星から供給されたガスのうち、60%を保持することができ、白色矮星の質量は確実に増加すること、白色矮星が炭素酸素型である場合には、近い将来、Ia型超新星として爆発することを明確に示すことができた。古典新星の色-等級図を作成し、その距離を推定する方法を確立できたことにより、古典新星の各種の物理量を正確に求めることができるようになった。これは、Ia型超新星の親星であると考えられる白色矮星の質量等を特定する上で、非常に役に立つ。
2: おおむね順調に進展している
Ia型超新星直前の天体の候補として、10年程度の周期で爆発する回帰新星がある。このような天体がIa型超新星になれるかどうかは、白色矮星の質量が増加できるかどうかによって決まる。新星爆発のたびにガスが放出されるので、積もったガスより、放出されるガスの質量が大きいと、白色矮星は太らず、逆にやせてしまう。アンドロメダ銀河の1年周期の回帰新星は、Ia型超新星爆発直前のモデルとしては最適で、この天体について、どの程度のガスが新星爆発のたびに放出され、あるいは白色矮星上に残されるかを調べることは、Ia型超新星爆発への連星系進化を調べる上で、鍵となる物理過程である。今回、詳細な理論モデルを構築できたことにより、この問題への回答が達成された。
次の問題として、このような新星爆発が繰り返されると、白色矮星上にヘリウム層が形成され、その質量が次第に増えていく。ある程度のヘリウムがたまると、ヘリウム層の下部のヘリウムに着火し、ヘリウム・シェル・フラッシュが起こる。もし、これが起こると、通常の水素核融合反応の新星ではなく、ヘリウム核融合型の新星(ヘリウム新星)が起こる。この場合に、どの程度のガスが放出されるのかの精確な見積もりは、まだない。2年度、あるいは、継続して、3年度の課題として、取り組みたい。研究課題の重要な項目のひとつに、暗いタイプのIa型超新星の起源を理論的に明らかにすることがある。その候補として、ヘリウム・デトネーション(ヘリウム爆轟)モデルがあるが、白色矮星上に、ある程度のヘリウム層がたまる必要がある。水素核融合反応による新星爆発の結果、どの程度のヘリウム層がたまっていくのかを詳細に調べることで、このタイプの暗いIa型超新星の頻度をできるだけ正確に見積もりたい。
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
The Astrophysical Journal
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http://lyman.c.u-tokyo.ac.jp/~hachisu/index.shtml