Ia型超新星の進化経路に関しては、二重白色矮星合体モデルと連星系中の単独白色矮星成長モデルの二つがあり、どちらがより重要かについていまだ未解明のまま推移している。この問題を解明するには、単独白色矮星が連星系中の相手の星からガスを受け取り、どのように成長するかを解明しなければならない。これは、白色矮星がチャンドラセカール限界質量近くまで到達したときに中心の炭素の不安定核燃焼が始まることで、Ia型超新星爆発に至るからである。特に、相手の星からの質量移動率が下がってきた場合に、白色矮星上に積もった水素ガスは、間欠的に水素核燃焼爆発を起こす。さらに、白色矮星質量が増加し、チャンドラセカール限界質量に近づいた場合には、この水素爆発の間隔が短くなり、1年以内となることが私たちにより理論的に明らかにされている。アンドロメダ銀河に出現した1年周期の回帰新星は、まさにそのような例であり、観測と理論的モデルの詳細な比較により、白色矮星がどのようにその質量を増やしていくかの調べる格好の天体である。今回、理論モデルと観測の対比から、相手の星から移動してきたガスのうち、約60%は新星爆発時に連星系の外に放出され、残りの約40%がヘリウムとなり、白色矮星に積もることが明らかにできた。さらに、この天体は、白色矮星質量が1.38倍の太陽質量と見積もられ、Ia型超新星として爆発する質量に非常に近いことが判明した。このことは、実際に連星系中の単独の白色矮星成長モデルにまさに対応する天体が存在し、その白色矮星質量が現在増加中であることを明確に示した。これにより、定量的に白色矮星質量の増加量が見積もることができたので、それをもとにして、Ia型超新星の発生率をより正確に推定できるようになった。
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