本年度は本研究計画の最大の目的である、乱流粒子加速による天体現象の解明、これを大きく前進させる論文を発表することができた。一つは現象論的アプローチによる、ブレーザーのスペクトルの説明である。Asano & Hayashida (2018)により、5つの代表的なブレーザーのスペクトルを乱流加速モデルで説明することに成功した。ここで提起された加速機構は加速時間スケールが粒子エネルギーに依存しない、Hard-sphere加速と呼ばれるものである。多くのブレーザーが普遍的にこの単一のモデルで説明できる可能性を示した、重要な結果であると考えている。もう一つの論文は、当初の研究計画で挙げていた課題の一つ、乱流の基礎理論に関するものである。先行研究では、流体シミュレーションにテスト粒子を注入し、その振舞いをみることで、乱流加速を論じていたが、そこで見られた加速機構の解釈は確立されていなかった。シミュレーションで再現している磁気流体中の波動には、Alfven波、Fast波、Slow波の三種類が存在しうるが、どのモードが粒子加速に効いているのか、どのような機構で加速しているのか、わからなかった。Teraki & Asano (2019)において、我々は流体シミュレーションではなく、純粋な単一モードの乱流を線形波動として用意し、そこでの粒子の振舞いをシミュレーションすることで、粒子加速について論じた。こうすることで、単一の波動モードの効果を取り出すことができ、それらの相対的な加速への貢献度の違いを割り出すことが可能となった。我々の結果は、従来考えられていたよりも高い効率で、粒子はFast波及びSlow波とTransit Time Dampingと呼ばれる共鳴を起こせることを確認した。大スケールFast波との相互作用による粒子加速は、我々が提唱したHard-sphere加速とも整合的である。
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