研究実績の概要 |
大質量星の形成過程を明らかにするためには、その初期状態を理解することが重要である。しかし、最近まで、大質量星形成以前の状態にある分子雲クランプのサンプルが少なく、大質量星形成の初期状態は未だ明らかにされていない。最近、Traficanteら (2015) は、Herschel 望遠鏡による銀河面サーベイのデータから、大質量星形成を起こす可能性が高く、かつ星形成を伴わないと考えられる分子雲クランプ、171 天体を同定した。我々は、それら分子雲クランプから、距離が5 kpc以内、質量 > (1300(半径/pc)1.33)Msun の条件を満たす55 天体を選び、野辺山45m望遠鏡を用い、DNC J=1-0, HN13C J=1-0, SiO J=2-1, N2D+ J=1-0, H13CO+ J=1-0, H13CN J=1-0輝線のサーベイ観測を行った。観測の結果、55 天体中51天体でHN13C輝線を検出し、32天体でSiO輝線を検出した。SiOが星形成に起因すると考えると、多くの低温大質量クランプで既に星形成が起きていることを示唆している。さらに、DNC/HN13C比を見ると、同じような温度 (10 K) にある天体でも、その値に有意なばらつきがみられた。このばらつきの原因として、分子雲クランプの形成タイムスケールの違いなどが考えられる。さらに、この観測で得られた結果をもとに、DNC/HNC比の異なる8天体を選び、ALMAを用いた観測提案を行っている。今後、野辺山45m望遠鏡の結果をもとに、マッピング観測などさらに展開していく予定である。
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