研究課題
星形成領域における偏波観測によりメタノールメーザーの分裂が観測されている。この原因として星間磁場によるゼーマン効果が考えられる。分裂幅から星間磁場を決定するためにはメタノールのゼーマン効果に関する実験室分光が必要であるが、先行研究では任意の遷移に関しての分裂幅を決めるパラメーターであるg因子が決定されていない。そこで、マイクロ波分光によって実験室標準として取得し、それらを利用した電波望遠鏡観測を目指した研究を行っている。平成29年度はひきつづき約0.7 Tの強磁場下でのメタノール分子のマイクロ波分光を行い、その分裂のデータをさらに様々な周波数帯で測定した。内部回転およびシュタルク効果を取り込んだ実験結果の解析を進めている。一方で実験室分光の結果から相対的に分裂幅が大きいと期待される108 GHzのメタノールメーザーサーベイを野辺山45m電波望遠鏡によって観測した観測データについても解析が終了した。108 GHzメタノールメーザーは従来、限られた数の天体でしか見つかっていないが、線幅やピークのシフト等の検討から本観測では2天体が108 GHzメーザーの候補と明らかにすることができた。実験室分光と野辺山45 m電波望遠鏡データの解析から偏波観測が可能となった電波望遠鏡ALMAによる観測提案を検討したが、現在の偏波観測では十分な感度がないため、次回(2019年のサイクル7以降)に観測を行えるよう、108 GHz、あるいはその他の周波数でのメーザーによる観測可能性を検討すること、ALMA以外の低周波数帯での観測について、国立天文台水沢VLBI観測所や米国電波天文台NRAOなど他の望遠鏡による観測も検討し、プロポーザル提出の準備を進めることが必要である。
2: おおむね順調に進展している
実験、観測とも投稿論文の準備に入っている。
電波望遠鏡ALMAでの偏波観測は現在は感度が不足しているため、将来的な観測に備えて、周波数108 GHz、あるいはその他の周波数でのメーザー観測可能性を検討すること、ALMA以外の低周波数帯での観測について、国立天文台水沢VLBI観測所や米国電波天文台NRAOなど他の望遠鏡による観測も検討し、プロポーザル提出の準備を進めることが必要である。既存のデータの再吟味も検討している。
平成28年度の国際会議出席の変更と当初よりも手作りの部分を増やしたことによる残額であり、平成29年度の旅費としての執行、平成30年度の物品、旅費等として利用する予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件)
Nature Astronomy
巻: 1 ページ: 146-1-5
10.1038/s41550-017-0146