研究課題
本研究の目的は、(1)超高分解能X線マイクロカロリメータを用いて銀河団内部のガスの速度構造を精密に測定し、銀河団ガスの運動状態と形態の相関を明らかにすることである。さらに、(2)ガス運動や超高温ガスの存在などに起因する銀河団質量の系統誤差を評価すること で、将来の精密宇宙論に備えて高精度の銀河団質量推定法を確立することを目指している。今年度は(2)に向けて、すばる望遠鏡Hyper Suprime-Cam戦略枠観測プログラム(HSC-SSP)のサーベイ領域内にある可視銀河団の系統的なX線解析を行い、銀河団スケール則や力学的進化の調査を進めた。可視銀河団カタログに含まれる約2000個の天体のうち、既存のX線カタログには約500個のX線対応天体がある。そのうち、今回は可視光リッチネスが20以上の約20個の明るい銀河団を対象として、XMM-Newton衛星のアーカイブデータの解析を行った。その結果、電波やX線観測から構築された銀河団サンプルに比べて、本可視光サンプルはX線重心シフトが大きい傾向を持つ一方、光度温度関係のべきは自己相似モデルの予言に近いことがわかった。これと平行して、過去にほとんど観測が行われていない高赤方偏移かつ大質量をもつ可視銀河団 7つをXMM-Newton衛星で新たに観測し、全ての天体から空間的に広がったX線放射を検出することに成功した。これらの研究成果について学会で発表した。加えて(1)に対して、ひとみ衛星代替機による銀河団ガス乱流マッピングの観測シミュレーションと銀河団質量測定法の検討を行った。この研究結果について国際会議で口頭発表を行い、また査読付き論文が受理された。
3: やや遅れている
今年度計画していた銀河団の系統的X線解析については、すばる望遠鏡HSC-SSP領域にある天体のX線アーカイブデータや新しい高赤方偏移銀河団のX線観測に基づいて研究を進めることができた。その成果は学会で発表し、また論文執筆を進めた。また将来の詳細X線分光によるガス速度構造測定と銀河団質量推定について結果を公表することができた。一方、今年度予定していたニュースター衛星による衝突銀河団の観測実施が年度末となり、データ解析の進度にやや遅れが生じた。
ニュースター衛星で取得した硬X線データを解析し、銀河団の質量構造に大きな影響を与える衝突合体現象とそれに伴う高エネルギー現象を調査する計画である。特に、遠方銀河団中の超高温ガス ・非熱的ガスの性質や磁場強度を従来よりも高い精度で決定する。そのため、ニュースター衛星データの硬X線スペクトルやバックグラウンドの詳細な分析に加えて、高温ガスの空間分布の情報を補うためにチャンドラ衛星の軟X線イメージ解析も行う予定である。また、すばる望遠鏡HSC-SSP領域の高赤方偏移銀河団のX線観測結果をまとめ、重力レンズ効果と比較しながら、銀河団スケール則の調査や銀河団の質量較正も進める予定である。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 13件、 査読あり 13件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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