研究課題
前年度に引き続き「ひとみ」衛星で得られた観測データの解析結果をまとめて出版した。前年度はペルセウス座銀河団のX線精密分光のデータに基づき、中心銀河の巨大ブラックホールからのX線放射、ブラックホールからのジェットが周辺環境(銀河団ガス)に与える影響などについて成果を発表した。それに引き続き「ひとみ」衛星の広帯域スペクトル観測能力を用いて、非熱的放射を示すX線源(パルサー風星雲、かに星雲)などの解析結果を発表した。また、銀河中心核巨大ブラックホールとその母銀河への影響、共進化を探るため、「ひとみ」衛星による精密分光データと相補的な、中心核付近からのX線放射と、周辺物質からの赤外線放射を組み合わせた観測とデータ解析を進めた。その過程で、見かけの光度がきわめて大きい(太陽光度の4x10^14倍)赤外線銀河を発見した。この光度が重力レンズによって増光されていること、ブラックホール質量と母銀河の質量比が近傍宇宙で測定されている値に比べ顕著に大きいこと、ブラックホール進化の比較的早い段階で大量の塵に覆われた状態にあることが示唆されること、などを示した。また、中心核ブラックホールからのX線と、周辺の塵から放射される赤外線の強度比が、ブラックホールへ物質が落ち込む「質量降着率」と関係していることを示した。このことは、質量降着率によって降着流や周辺物質の構造が変化していることを示唆している。並行して、赤外線銀河のX線分光解析をが進行中であり、巨大ブラックホールと銀河の共進化過程に位置づけることを試みている。
2: おおむね順調に進展している
「ひとみ」衛星で得られたX線精密分光データは限られているが、巨大ブラックホールそのものからのX線放射と周辺の銀河団環境についての解析はこれまでに行うことができた。また、相補的なX線データ(膨大な各種X線天文衛星によるアーカイブデータ)、可視光や赤外線による超広域サーベイのデータを組み合わせることで、様々な巨大ブラックホール-母銀河の共進化過程にあると予想される種族を選択し、解析を進めることができている。
引き続きX線分光データに多波長データを組み合わせ、様々な巨大ブラックホール-母銀河の共進化過程を探る。特に、巨大ブラックホール周辺を隠す吸収物質、中心核からのアウトフローのダイナミクス、それらの間の関係などに着目して研究を進める。得られた結果を総合的に解釈し、様々な種族の天体の進化の上での位置付けを推定する。これまでに得られた結果をまとめ、国際会議や査読論文として発表する。
次年度開催の本研究課題に合致したテーマの国際会議に出席し成果発表を行うため。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 8件、 査読あり 7件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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