研究課題
本研究ではX線精密分光を主な手段として、巨大ブラックホールがその周辺環境におよぼす影響を評価し、そのブラックホール進化との関連を理解することを目指した。様々な観測から、銀河の中心に存在する巨大質量ブラックホールは、その母銀河と影響を及ぼしあいながら進化してきたと考えられている。また、巨大ブラックホールからの質量噴出は、銀河団スケールにまで影響を与えることも知られている。その現場を観測的にとらえ、相互作用を理解することは、宇宙の様々なスケールにおける天体の進化を理解する上で必須である。「ひとみ」衛星搭載軟X線分光器による観測を行い、ペルセウス座銀河団の精密分光データの解析を進めた。まず、ペルセウス座銀河団の中心銀河NGC 1275の中心部に存在する巨大ブラックホールの周辺物質の運動状態を初めて決定した。このブラックホールからの激しい物質の噴出にもかかわらず、周囲の銀河団ガスは静穏であり、速度分散の大きなガスでも200 km/s程度であることを明らかにした。X線精密分光と並行して、相補的な観測として、X線/可視光/赤外線の広視野サーベイデータを用い、遠方(赤方偏移4程度)の巨大ブラックホール(クェーサー)や、吸収を受けた巨大ブラックホールの探索を行った。これにより、可視光で暗くX線で明るく見える天体内部の吸収物質について考察した。特に最終年度は、進化の途上にあると考えられる大光度の巨大ブラックホールの観測から、ブラックホール質量と母銀河の質量比が近傍宇宙で測定されている値に比べ顕著に大きいこと、ブラックホール進化の比較的早い段階で大量の塵に覆われた状態にあることが示唆されること、などを示した。また赤外線銀河の広帯域X線スペクトルの解析から、ブラックホール進化の重要なフェイズである、大量の物質に隠された巨大ブラックホールを発見した、また、これらの成果を査読論文などで発表した。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Astrophysical Journal
巻: 888 ページ: 8pp
10.3847/1538-4357/ab5718
巻: 876 ページ: 18pp
10.3847/1538-4357/ab1754