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2016 年度 実施状況報告書

クエーサー吸収線系から探る原始銀河と周辺域の環境

研究課題

研究課題/領域番号 16K05299
研究機関東京理科大学

研究代表者

大越 克也  東京理科大学, 基礎工学部教養(長万部), 准教授 (50453832)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードクエーサー吸収線系 / 銀河形成 / 銀河間物質 / 理論天文学
研究実績の概要

申請書記載の各研究課題に関する平成28年度に行った研究実績は以下の通りである。

(1) クエーサー吸収線系母銀河の解明に関して。2016年4月にKeck観測所(ハワイ島)にて予定していた観測計画が装置故障のために実施できなかった。引き続き、2017年2月に、すばる望遠鏡(ハワイ島)に於いて母銀河観測を実施した。現在、観測結果を解析中である。併せて本課題に関する継続的な観測計画を策定した。

(2) 原始銀河および周辺域環境の進化過程の解明に関して。クエーサー吸収線系理論モデルの構築に関して、中性水素吸収線系の起源と進化に注目することにより、銀河進化過程における原始銀河周辺域ガスの役割を解明するために、数値シミュレーション(ν^2GC)によって作成された銀河カタログに基づくクエーサー吸収線系理論モデルのコードを開発している。これは、「京」コンピュータによる現時点で最も大規模なスケールにおける数値計算に基づくモデルであるため、銀河形成はもとより、銀河を取り巻く周辺域環境や大規模構造の進化過程の考察に最も適したものである。本課題に関しては、多様な銀河特性と同時に、中性水素が多量に存在する近傍銀河の観測的特性(質量分布など)を説明するには、どのようなモデルが最適であるかを考察し、中性水素を太陽質量の10^8倍以上をもつ近傍銀河の分布則を再現できるリファレンスモデルを構築できた(Makiya et al. 2016)。本研究成果は、将来的にクエーサー吸収線系と銀河の関連性を視野に入れながら、多様な銀河の観測的特性を説明できる理論モデルを構築できたという点で意義あるものである。この成果を踏まえ、並行して進めている観測計画から得られる観測データとの比較検証できるような高赤方偏移におけるクエーサー吸収線系と原始銀河に関する理論モデルのコードを開発する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究課題である原始銀河および周辺域環境の進化過程の解明に関して。平成28年度において、原始銀河周辺域のガスを起源とする中性水素吸収線系に注目したクエーサー吸収線系に関する理論モデルの構築および母銀河探査を中心とする観測データの取得に関する研究計画を予定していた。

理論モデル構築に関しては、研究実績概要にあるように、近傍銀河の中性水素ガス質量を再現できる大規模数値シミュレーションに基づく銀河形成・進化に関するリファレンスモデルを構築し、クエーサー吸収線系に関する考察が可能なモデルの構築という本課題に関する当初目的の第一段階に至っている。一方、原始銀河周辺域のガスを起源とする中性水素吸収線系の母銀河探査を中心とする2つの観測計画またはデータ解析を実施予定であった。しかし、平成28年2月に予定されていたすばる望遠鏡を用いた観測計画において、望遠鏡自体の故障が突発的に発生し、実施することはできなかった。引き続き、平成28年4月にKeck観測所における観測計画も予定されていたが、望遠鏡装置の波面センサー故障によるトラブルで実施できず、本課題に関する当初予定されていた観測データを全く取得できなかった。このような事情より、観測に関する研究計画に関して、やや遅れている進捗状況にある。ただし、その後に、本課題に関する観測計画を立案・採択され、新たに、平成29年2月、すばる観測所(ハワイ)において、一部の観測計画を実施することできた。現在、取得データの解析中である。当初予定していた計画の一部のみの実施ではあるが、解析結果次第で、当初予定していた観測計画の完遂を目指し、研究計画の進捗状況の改善が望めると考えている状況である。

今後の研究の推進方策

本研究課題である原始銀河および周辺域環境の進化過程の解明に関して、平成29年度においては、平成28年度に引き続き、原始銀河周辺域のガスを起源とする中性水素吸収線系に注目した理論モデルの構築および母銀河探査を中心とする観測データの取得に関する研究計画を予定している。

理論モデル構築に関しては、多様な銀河の特性と同時に、近傍銀河の中性水素ガス質量を再現できる大規模数値シミュレーションに基づく銀河形成・進化に関するリファレンスモデルを中心に、観測計画の進捗状況を鑑みながら、今後、取得が予定されている観測データと比較及び検証可能なクエーサー吸収線系に関する理論モデルの構築を、当初の研究計画に沿って進める予定である。一方、現在の進捗状況に記載したように、原始銀河周辺域ガスを起源とする中性水素吸収線系の母銀河探査の観測実施計画が、望遠鏡及び装置故障等による予期していた通りに実施できていなかったが、引き続き平成29年2月に実施したすばる望遠鏡による取得できた観測データの解析を行い、その結果を踏まえて、当初予定していた研究計画を実施する予定である。また、原始銀河周辺域のガスを起源とする金属吸収線系に注目した観測計画を提案しており、金属吸収系の母銀河に関する観測データが取得できれば、前者の中性水素に着目した結果と合せて、原始銀河周辺域ガスの化学的特性の解明という課題目的を進める予定である。

さらに平成29年度から、原始銀河に加えて、高赤方偏移における代表的な天体であるクエーサーに注目し、その周辺域に拡がるガスの空間分布、輻射場、化学組成などの特性を、背景にある他のクエーサーのスペクトルを利用して、クエーサー周辺域ガスの起源や進化を解明する研究計画も新たに共同研究において推進しており、原始銀河およびクエーサーの周辺域環境を相補に比較することにより、本研究課題の推進を多角的に図る予定でもある。

次年度使用額が生じた理由

平成28年に実施予定の観測データが装置故障等により取得できなかったために、データ解析や結果に関する検討に必要な当初予定していた必要経費(主に旅費や機器購入)の支出ができなかったため。

次年度使用額の使用計画

平成29年度に研究計画に従った観測データの一部が取得できる予定であるため、そのデータ解析および解析結果の検討に必要な経費(旅費や機器購入など)に使用する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] The New Numerical Galaxy Catalog (ν2GC): An updated semi-analytic model of galaxy and active galactic nucleus formation with large cosmological N-body simulations2016

    • 著者名/発表者名
      R. Makiya, M. Enoki, T. Ishiyama, M. A. R. Kobayashi, M. Nagashima, T. Okamoto, K. Okoshi, T. Oogi, and H. Shirakata
    • 雑誌名

      PUBLICATIONS OF THE ASTRONOMICAL SOCIETY OF JAPAN

      巻: 68 ページ: 25-1 25-26

    • DOI

      10.1093/pasj/psw005

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] QSO Absorption System -- DLA & IGM2016

    • 著者名/発表者名
      Okoshi, K.
    • 学会等名
      Galaxy-IGM 研究会
    • 発表場所
      信州大学
    • 年月日
      2016-12-05 – 2016-12-07
    • 招待講演
  • [学会発表] Resolving Internal Structure of Circum-Galactic Medium Using Gravitationally Lensed Quasars2016

    • 著者名/発表者名
      Koyamada, S., Inada, N., Oguri, M., Okoshi, K., & Kashikawa, N.
    • 学会等名
      Galaxy-IGM 研究会
    • 発表場所
      信州大学
    • 年月日
      2016-12-05 – 2016-12-07

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公開日: 2018-01-16  

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