研究課題
申請書記載の各研究課題に関する平成30年度に行った研究実績は以下の通りである。(1)クエーサー吸収線系母銀河の解明に関して。2017年2月に実施したSubaru望遠鏡(ハワイ)によるクエーサー吸収線系の母銀河観測に関する観測結果に基づき、中性水素柱密度の高い吸収線系および金属吸収線系に関するデータ解析を完了し、一部のデータを補完するために、本課題に関する継続的な観測計画を策定した。(2)原始銀河および周辺域環境の進化過程の解明に関して。原始銀河周辺域環境の進化過程の解明に関して。2018年8月に国際天文学連合総会(ウィーン)にて、Subaru観測結果および理論モデルに関する2件の発表を行った。この成果を踏まえ、並行して進めている母銀河観測結果(1)との比較・検証するために、Subaru/Keck望遠鏡による観測に加え、新たにALMA望遠鏡などによる電波観測計画を立案した。また、理論研究グループとの共同研究により、準解析的モデルによる銀河形成過程における活動銀河核・Super massive black holeの果たす役割を調べた(”The New Numerical Galaxy Catalogue (Nu2GC): Properties of Active Galactic Nuclei and Their Host Galaxies” Shirakata et al, 2019)。本研究成果により、銀河形成期におけるBlack holeへのガス膠着率等に制限がつき、初期段階における銀河形成過程に新しい示唆が与えられた。さらに、本研究課題に関する進捗状況を鑑み、2018年11月、クエーサー吸収線研究会「Cosmic Shadow 2018」を石垣島にて開催し、2件の発表及び本課題を中心とした意見交換を行い、電波観測提案など今後の研究計画のさらなる促進を図った。
2: おおむね順調に進展している
原始銀河周辺域のガスを起源とする中性水素吸収線系の母銀河探査を中心とする観測に関して、平成28年2月に予定されていたすばる望遠鏡の機器故障、および、平成28年4月に予定されていたKeck望遠鏡の波面センサー装置故障によるトラブルで実施できず、本課題に関する当初予定されていた観測データを全く取得できず、遅れた進捗状況にあった。しかし、平成29年2月に実施したSubaru望遠鏡による観測データ解析が完了し、主に高い金属柱密度ももつ吸収線系の空間分布に関する考察を取りまとめている段階にある。一方、理論モデル構築に関しては、理論研究グループと共同して、主に吸収線を生じるガスの環境下における輝線天体に関する理論モデルを構築している。上述した新しい銀河形成モデルに基づき、研究実績概要にも記載した金属イオンを含めた銀河周辺域物質の観測的特性との比較・検証可能なモデルを構築し、当初予定していた研究目的の完遂を目指している。現時点において、従来のSubaru/Keck望遠鏡による未実施のターゲットがいくつか残っている。これらに関する吸収線系母銀河探査に関する観測提案を行っている。一方で、本年度より、近年注目されているALMAなどによる電波観測提案を国内外の研究者と共同で行っている。これは取得済みの観測データに加え、電波も加えた多波長観測データを相補的に取得する必要性が生じたためである。加えて、上述の理論モデルとの比較・検証することにより、銀河周辺域ガスの物理的・化学的特性を明らかにすることが目的である。このように、本研究課題の推進を多角的に図っている状況にある。また、上述したすばる望遠鏡の機器故障(平成28年2月)、および、Keck望遠鏡の波面センサー装置故障によるトラブル(平成28年4月)による研究計画の遅延に伴い、平成31年度まで本課題研究期間を延長した。
上述した観測機器故障(平成28年2月及び4月)による一部の観測データの欠落を補うべく、本年度も昨年度から継続して、本研究課題である原始銀河および周辺域環境の進化過程の解明に向けた、クエーサー吸収線系の母銀河やその周辺域環境に関する観測及び理論モデルによる検証を中心とする研究計画を予定している。現在までの進捗状況に記載したように、原始銀河周辺域ガスを起源とする中性水素吸収線系の母銀河探査において、実施できなかった一部のターゲットについて、Subaru/Keck望遠鏡による観測計画を実施する予定である。また、すでに取得した観測データに関する情報の一部が欠落していることが判明し、Subaru望遠鏡などによる従来の観測データでは不十分であることから、この欠落したデータを補完する目的のもと、新たにALMA望遠鏡などによる電波観測も国内外の共同研究として立案し、実施する予定である。これと並行して、当初の研究計画に従って、比較的低い電離度をもつ金属吸収線系の母銀河探査に関するALMA望遠鏡などによる電波観測計画を提案している。これらの観測を実施することにより、本研究課題の主な対象である高い中性水素柱密度および低い電離度の金属柱密度をもつ銀河周辺域ガスをもつ母銀河を多波長で観測することにより、中性水素ガスを多く含む金属で汚染された銀河周辺域物質の物理的・化学的特性や、銀河周辺域ガスの母銀河に対する空間・速度分布を正確に査定することができるようになることが期待される。これと並行して、観測計画の進捗状況を鑑みながら、大規模スケールに特化した数値シミュレーションに基づく銀河形成・進化に関する新しい標準モデルから予想される結果と、これらの観測結果を比較することにより、当初の研究計画に沿った内容を実施する予定である。
平成28年2月に予定されていたすばる望遠鏡の機器故障、および、平成28年4月に予定されていたKeck望遠鏡の波面センサー装置故障による予期できないトラブルで実施できず、本課題に関する当初予定されていた観測データを全く取得できず、遅れた進捗状況にあった。これに伴い、当該年度において、使用予定であった助成金を使用する予定である。
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MONTHLY NOTICES OF THE ROYAL ASTRONOMICAL SOCIETY
巻: 482 ページ: 4846 4873
10.1093/mnras/sty2958