研究課題
申請書記載の研究課題に関する令和元年年度に行った研究実績は以下の通りである。Subaru望遠鏡の機器故障(平成28年2月)、および、Keck望遠鏡の波面センサー装置故障によるトラブル(平成28年4月)による研究計画の遅延に伴い、令和元年度まで本課題研究期間を延長した。当該年度において、2017年2月に実施したSubaru望遠鏡(ハワイ)によるクエーサー吸収線系の母銀河観測に関する観測結果の解析と併行し、母銀河のハロー程度の周辺域に存在する背景銀河の探査をALMA望遠鏡等により実施した。また、準解析的銀河形成モデルによって、クエーサー吸収線系と強い相関があるHα輝線天体の空間分布の環境依存性を考察した。本研究成果により、銀河進化過程における原始銀河の周辺域環境の差異が光度分布関数に与える影響に関する有益な示唆が得られた。当研究課題について、研究期間を通じて、主に銀河の進化過程における銀河周辺域ガスの物理的・化学的特性を考察した。本研究課題では、高い中性水素密度をもつクエーサー吸収線系を銀河周辺域ガスから起因したものと捉え、その空間分布や特性を重力レンズ天体のスペクトルを利用し調べた。その結果、赤方偏移z=1-2において、銀河周辺域ガスは、(a) 中性水素と低イオン金属の空間分布(~10 kpc)の間には強い相関があり、(b)典型的なハローのサイズより広い範囲(~500 kpc)に分布している傾向が強い。また、高い中性水素密度(>10^20 /cm^2)をもち、柱密度比(0.1-600)が大きな周辺域ガスをもつ銀河は典型的なLyα輝線天体より低い星形成率(<10 M_sun/yr)をもつことが判明した。これに伴い、今後、電波観測および複数の背景光源のスペクトル分光観測を行い、より広範囲の周辺域ガスの物理的・化学的特性と銀河の星形成過程との関係を調べる必要がある。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うちオープンアクセス 3件、 査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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Cosmic Shadow 2018 ~クエーサー吸収線系でみる宇宙~
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