研究課題
我々の銀河に潜むブラックホールや、遠方の銀河の中心に存在すると考えられる超巨大ブラックホールに恒星が吸い込まれる潮汐力破壊現象のX線領域での長時間変動の調査や検出を行うため、全天X線監視装置 MAXI のデータを用いた解析準備を新たに購入した計算機で始めた。新天体の発見に関しては、平成 29 年 3 月末に我々の銀河のハローに漂う暗いX線源 MAXI J1807+132 をこれまで開発してきた突発天体発見システムで発見し、世界に速報した (Negoro et al. The Astronomer's Telegram(ATel) #10208)。発見後、 Swift 衛星や国内の可視光望遠鏡によって追観測が行われ、それらの観測から同天体の正体が中性子星ある可能性が高いなどその特徴が明らかとなった。また、12 月には既知天体ではあるがブラックホール候補天体 GRO 1739-278 の 1995 年来の再活動を世界に先がけ検出し、速報した (Negoro et al. ATel. #9876, Masumitsu et al. #9895)。また、もう一つの研究課題である新天体までの距離の測定手段の確立については、増満隆洋とともに MAXI と Swift 衛星のデータを用いて既知のブラックホール天体 GX 339-4 と H 1743-322 の状態遷移時の明るさを詳細に調べ、遷移時の光度が距離の指標になることをこれまでにない精度で確認した。3月末に発見された MAXI J1807+132 を除き、これらの成果については平成 28 年 12 月に行われた国際会議(MAXI Workshop)や平成 29 年 3 月に行われた日本天文学会で発表した。
3: やや遅れている
平成28年10月末に追加採用となり、その後、研究に必要な計算機を購入したため、研究計画に記した微弱な長期変動天体の検出のための閾値の調査については、まだデータ解析のための準備段階にあり、終了していない。一方、研究実績に記したように、新天体の発見や新天体への距離の見積もり手段の研究については概ね順調に進んでいる。
引き続きX線天体の長期変動調査を行うためのデータ解析の準備と調査を行う。そのデータ解析で用いる、MAXI の過去の全データをデータベースに登録する作業を現在も逐次行っており、平成 29 年の夏には長期変動を捉える閾値の調査も終える予定である。また、状態遷移と光度の関係については、新天体までの距離の指標としてだけではなく、降着円盤理論モデルの検証として、28 年度に得られた調査結果を査読論文として発表予定である。一方、研究計画に記したもう一方の新天体への距離の見積もり手段としての星間吸収と距離の関係についても、29 年度中に調査を終わらせる予定である。新天体検出に関しては、長期変動を捉える閾値の調査の際に、画像フィッティグ方式も導入し、さらなる自動化と検出の信頼度の向上を目指す。
残金は少額であることから、無理に使用せず、予定の範囲内で次年度に繰り越して使用することとした。
少額であることから、残金に対して特別な計画はなく、次年度予算とともに使用する予定である。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 8件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 69 ページ: id15, 1-15
10.1093/pasj/psw119
The Astronomer's Telegram
巻: 10208 ページ: 1-1
7 years of MAXI Monotoring X-ray Transients
巻: 1 ページ: 15-20
巻: 1 ページ: 39-44
巻: 1 ページ: 89-90
巻: 1 ページ: 91-92
巻: 1 ページ: 167-168
巻: 9707 ページ: 1-1
巻: 9876 ページ: 1-1