研究課題
全天X線監視装置 MAXI のデータを用いた突発天体発見システムにより今年度新たに4つの新天体 MAXI J1727-203, J1810-222, J1631-479, J1348-630 を発見し、世界に速報した。特に新たに研究室で開発した、容易に任意の時間とエネルギー領域の画像データが取得できるシステムにより、研究目的の一つである1日の検出限界強度以下の暗い天体(MAXI J1810-222)の発見に成功した。また、同天体は、発見当時、太陽に近い位置にあったため、共同研究を行なっている Swift 衛星では観測できず、太陽近くでも観測できる硬X線観測衛星 NuSTAR に初めて観測を依頼し、新天体であることが確認された。MAXI J1727-203 の発見に際しても、Swift 衛星が観測できない状態であったため、代わって同じく ISS に搭載された NICER が複数のポインティング観測を行い、新天体であることが確認された。これらの観測により、J1810-222 を除く 3 天体は新たなブラックホール候補天体であることわかった。このように今年度は、多くのブラックホール新天体等を発見し、研究計画に記した以上の新たな国際協力体制により、それらの正体の解明も進んだ。一方、J1810-222 はこれまで観測された天体に比べ、熱的な放射の温度が 0.5 keV 程度と低く、新種の天体である可能性がある。その解析結果等を 2019 年 3 月の日本天文学会等で発表した。また、その他の天体に関しても大学院生らとともに解析を進めており、今後、学会および論文発表を行なう予定である。また研究課題のブラックホール天体以外にも、XTE J1810-197 をはじめとする多くの突発天体を研究室で開発してきた突発天体発見システムで捉え、世界に報告し、それらの天体の共同研究も行なった。
3: やや遅れている
例年の倍の数ほどの新天体の発見により、新天体の解析に時間を要し、研究課題の一つであった過去のデータの再解析は遅れを生じている。一方、昨年度までの作業で問題となった、観測延長等に伴う過去のデータ追加による保存領域が足りなくなる問題に関しては記憶装置を購入し、システムを再構築して解決した。星間吸収量の違いによる新天体の距離の見積もりに関しては、今年度、より精度を上げた銀河の質量分布モデルを用いて改良を行ったが、銀河の腕の構造を想定以上に正確に取り入れることが重要であることがわかり、最終的な結果を得るのに遅れが生じている。
大学院生らとともに発見された新天体の解析をまとめ、論文発表を行う。その一方で、膨大な量の再解析は時間を要するため、データベースへの蓄積だけでも並行して行う。また、来年度行われる予定の国際学会でもこれまでの成果の発表を行う予定である。また、銀河の腕の構造を取り入れた星間吸収量の見積もりに関しては、銀河構造学を専門とする研究者にも相談して進める予定である。
データ解析やシステム改良に多くの時間を割き、論文および学会発表が次年度以降となり次年度使用が生じた。次年度、9月にイタリアのボローニアで行われる国際学会で発表するなど、主に研究成果発表に繰越金を用いる予定である。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (12件) (うちオープンアクセス 6件、 査読あり 6件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
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