本研究の目的は、惑星系形成の作業仮説である「連鎖集積シナリオ」にそって、複数の惑星から構成される惑星系の構造形成の素過程を調べ、太陽系と系外惑星系の構造の起源を明らかにすることである。このシナリオの素過程を調べるために、汎用 GPU (グラフィックプロセッシングユニット)用いた専用実験装置「惑星系形成シミュレータ」を構築し、それ用の高速多体シミュレーションコードを開発し、惑星集積の大規模多体シミュレーションを系統的に実行する。平成30年度は、これまで開発してきた惑星集積多体シミュレーションコードに微惑星合体条件を実装し、現実的な合体条件下での微惑星集積を調べることを可能にした。
今年度は計画当初予定していたハードウェア増強には予算が不足したためソフトウェアの改良を行うことにした。これまでに開発した惑星集積多体シミュレーションコードでは、簡単のため微惑星は衝突したら必ず合体するという完全合体の条件を採用していた。しかし、これは現実的ではなく、高速衝突やかすめるような衝突では、微惑星どうしは合体しない。数値シミュレーションによる微惑星衝突実験で調べられた微惑星の合体条件をモデル化し、コードに実装した。これに合わせて、GPU による重力相互作用計算パイプラインのさらなる最適化と高速化も行った。このコードを用いて調べた現実的な合体条件を用いた原始惑星形成過程の結果は現在論文にまとめている。
これまでの開発によって、進化するガス円盤中での現実的な合体条件を考慮した微惑星集積のシミュレーションが可能な GPU で加速された実験装置「惑星系形成シミュレータ」が完成した。これらの開発したコードは公開予定である。現在、ガス捕獲によって成長するガス惑星1個とその外側の微惑星円盤からなる系を用いて、連鎖集積の素過程である第1ガス惑星形成の外側の微惑星円盤の進化へ影響について調べている。
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