研究課題
本研究において目標の一つである恒星のALMA長基線サブミリ波高角度分解能観測を実現するため、2017年度以降に実証試験を行なってきており、昨年度、これまでの技術検証結果をまとめた論文が「Astronomical Journal」で受理された。また、これらの試験観測の中で、今もなお活発な質量放出を行う赤色巨星の大犬座VY星(VY CMa)のサブミリ波帯における水メーザー一酸化珪素メーザーの観測成果を紹介した論文が「Astrophysical Journal Supplement Series」から出版された。本論文では、星形成領域牡牛座HL星(HL Tau)のサブミリ波連続波による高空間分解能観測の成果も紹介した。特にVY CMaの観測結果について詳細解析を行い、連続波源で捉えられた光球面からの熱的放射を取り巻くように一酸化メーザーのシェル、さらにそれを取り巻くように分布する水メーザーの放射を捉えることに成功した。この試験観測では8ミリ秒角の角度分解能を達成しており、VY CMaの距離においておよそ9.4天文単位の空間分解能に相当する。VY CMaの光球の視直径が11ミリ秒角と報告されていることを考慮すると、光球サイズとほぼ同等の分解能を実現したことになる。ALMAの高感度観測により、光球面と接続する質量放出されたダストからの放射を捉えることに成功し、超巨星からの異方性のある質量損失を現場を撮像することができた。また、サブミリ波水メーザーについては、ダストの溜まりとの境界においてアーク状の構造を観測することができ、過去に大量に行われた質量損失による物質と現在起こりつつある質量損失のガスが衝突している様子を捉えることに成功した。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
The Astrophysical Journal Supplement Series
巻: 247 ページ: 23~23
10.3847/1538-4365/ab6b20