本研究では、口径8.2mのすばる望遠鏡の新広視野カメラHyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム、HSC)を用いて、地球接近小惑星・ハンガリア領域小惑星・メインベルト小惑星のサイズ分布を求め、小惑星が受けた軌道進化や衝突機構を観測的に明らかにすることを目的としている。また、E-belモデルに対する観測的な制約を与え、後期重爆撃期における小惑星サイズ分布の解明に迫る。 令和元年度までに取得画像の画像処理方法を確立した。この画像処理方法の確立には、本研究課題と並行して行なっている木曽観測所Tomo-e Gozenカメラを用いた地球接近天体検出で得た知見が役になった。また、小惑星を自動検出アルゴリズムを構築した。さらに検出した小惑星を目視で効率的に確認するためのGUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)アプリケーションの開発を行った。このGUIを用いることで、HSCのおよそ10分の1の視野領域を15分程度で探索できるようになった。 令和2年度は、作成したGUIを用いて小惑星の検出・位置測定・測光およびMinor Planet Centerへの報告を行った。報告した天体のうち新発見候補天体は4141天体である。また既知の874天体に対して位置測定を行い、その軌道精度の改良に寄与した。観測された小惑星の明るさは25等級より暗いものも存在した。小惑星の軌道長半径を2.2au、反射率を0.1と仮定した時、この明るさの小惑星の直径はおよそ100m程度であり、目標とする直径100mサイズの小惑星が検出できることを立証した。
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