研究実績の概要 |
平成28年度は研究計画のうち,(1)格子ゲージ理論の経路積分の複素数拡張とLefschetz thimble structure の解析,(2) Lefschetz thimble 上のハイブリッド・モンテカルロ法の改良; フェルミオン行列式を含む場合,(3) 有限密度-QCD (HDQCD) への適用に関連する課題に取り組んだ。特に,複素数拡張された格子ゲージ理論の経路積分におけるLefschetz thimble構造を解析するために,複素数古典解 (critical point) の分類,thimble-構造 (gradient flow, intersection number,Stokes phenomena) の解析を進めることが課題である.平成25年~27年度に行った,1次元Thirring模型における Lefschetz thimble 構造の解析からは,有限密度下の1次相転移が複数の thimble の寄与によって得られる事が明らかになった[1,2]. このような複数の thimble の寄与を,一つのthimbleの寄与として与えることができるような,複素数拡張におけるreweight法やLefschetz thimble 構造の変形の可能性を詳細に検討した[3].後者のthimble 構造の変形の方法[4]は,本質的には,複素数拡張におけるreweight法の一種とみなすことが可能であり,いずれの方法でも,overlap問題による限界があり得る.統計によってどこまでoverlap問題を回避できるのか,1次元Thirring模型において検証した.
[1] H. Fujii, S. Kamata and Y. Kikukawa, JHEP11(2015)078, arXiv:1509.08176 [hep-lat]. [2] H. Fujii, S. Kamata and Y. Kikukawa, JHEP12(2015)125, arXiv:1509.09141 [hep-lat]. [3] H. Fujii, S. Kamata and Y. Kikukawa, in preparation. [4] S. Tsutsui and T. M. Doi, Phys.Rev. D94 (2016) no.7, 074009, arXiv:1508.04231.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年~27年度に行った,1次元Thirring 模型における Lefschetz thimble 構造の解析からは,有限密度下の1次相転移が複数の thimble の寄与によって得られる事が明らかになった[1][2].このような複数のthimble の寄与を有効的に取り込むことができる方法として,contraction algorithm が提案されている[5].この方法を検証し,格子ゲージ理論に適用するために必要な改良に取り組む.
A. Alexandru, G. Basar, P. F. Bedaque, G.W. Ridgway, C. Warrington, JHEP 1605(2016) 053, arXiv:1605.08764 [hep-lat].
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