研究実績の概要 |
(1)前年度までに得られたe+ e- コライダーにおけるレプトン・フレーバーの破れ(lepton flavor violation, LFV)に関する成果を発展させ、将来の加速器実験におけるLFV検証可能性に関する研究を推進した。前年度までの研究では6つあるLFV結合定数のうち、一つだけが支配的であるという仮定 (single coupling dominant hypothesis)を採用していたが、複数の結合定数間の相関について調べる、左及び右巻き電子に関する2つのスカラー結合定数に対して将来実験からの制限がどのように与えられるかを示した。 (2)前方検出器を用いた、光子・陽子衝突過程による新粒子探索としてスピン1媒介粒子によるフェルミオン暗黒物質の生成およびその探索可能性について調べた。媒介粒子が暗黒物質および標準模型フェルミオンとそれぞれベクトルおよび軸性ベクトル型相互作用する際の結合定数をパラメータとし、前方検出器を用いた光子・陽子衝突過程からの制限を求めた。 (3)暗黒物質が「直接検出実験」と呼ばれる、原子核との散乱実験において反応が抑制される機構を、複素スカラー粒子を導入した標準模型の拡張模型において示した。この模型では、スカラーポテンシャルに対してCP対称性を要請することで暗黒物質の安定性が保証され、複素スカラー粒子の虚数部分が暗黒物質として振る舞う。同粒子の実数部分と標準模型ヒッグスの混合した質量固有状態の将来コライダーにおける探索可能性について調べた。 (4)ある種の暗黒物質模型がゲージ結合定数の統一を実現する可能性について調べた。SO(10)大統一模型の枠組みで暗黒物質粒子となる表現を選ぶことにより、SO(10)が標準模型ゲージ群へと対称性を破る際に暗黒物質の安定性を保証する離散対称性が現れることを示し、模型のコライダー実験における探索可能性を議論した。
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