研究課題/領域番号 |
16K05318
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
濱中 真志 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 講師 (70377977)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | インスタントン / ソリトン / ADHM構成法 / 可積分系 |
研究実績の概要 |
非可換空間におけるインスタントン解のAtiyah-Drinfeld-Hitchin-Manin (ADHM) 構成法に関する中津了勇氏(摂南大学) との共同研究を今年度も継続し, スター積形式における双対性に関する主論文をまとめているところである.またオペレータ形式におけるインスタントン数の起源に関して重要な公式の考察を深めているが論文としてまとめるには至っていない. 2017年8月の国際会議「Calabi-Yau Manifolds: Arithmetic, Geometry and Physics」にてこれまでの成果発表を行い,代数幾何学の専門家と研究交流を行った. ソリトン理論の非可換化プログラムの階層化(特にDrinfeld-Sokolov 階層やASDYM階層), 高次元化にも重点的に取り組んだ. 非可換ASDYM階層のソリトン解を構成し漸近的振る舞いを議論した. 国際会議「Physics and Mathematics of Nonlinear Phenomena (PMNP2017): 50 years of IST」および「Workshop on solitons, gauge fields and the integrability: Methods and Applications」で発表し,前者のプロシーディング論文としてまとめた. 可積分系のラグランジュ形式に向けた定式化についても児玉裕治氏(米国オハイオ州立大学)、高崎金久氏(近畿大学)と議論しながら考察を深めた. 高次元インスタントン解の構成については岡部央昂氏(名古屋大学多元数理科学研究科・大学院生)と引き続き議論を重ねている.岡部氏の導出した厳密解に対して物理的解釈や応用を考えている.全体的にはすべて良い方向に進展しており,継続研究による実りある成果が期待される. 一連の成果に関して国内外の研究会で積極的に発表し, 幅広い分野の専門家と質疑応答を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
公表には至らないものの研究自体は着実に進んでおり, また関連した話題について専門的知識を吸収する機会がたくさんあり, 個人的にはとても有意義な一年だったと感じている. 特にALF 空間上のインスタントンに付随したBow ダイヤグラムに関してセミナー・研究会から多くの知見を得た. 柳田伸太郎氏(名古屋大学多元数理)のHilbert スキームについての集中講義や望月拓郎氏(京都大学数理解析研究所)のKobayashi-Hitchin 対応の解説は,大変貴重だった.
研究会には今年もいろいろと参加し, 交流を深めてきた. 特に, イタリアの国際会議に今年こそ意を決して参加したのが非常によかった. 休憩時間に可積分系の専門家(特に児玉氏と高崎氏)にコバンザメのようにへばりついて質問ばかりしていたが可積分系のいろいろな側面について理解が深まった. レジストレーション代を想定してなかったり為替が悪い方向に動いたりして5 万円ぐらい赤字だったが元は十分とった.
昨年度から北里大学とのつながりが芽生えて, 国際会議に呼んでいただくなど意義深い交流があった. 特にCaloronの最新成果に関する知見を得た.
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今後の研究の推進方策 |
ソリトン理論の非可換化・高次元化については,現在の良い研究進展を継続し,今年度は複数の論文としてまとめて成果発表を積極的に行いたい.特に昨年度多くの知見を得たBowダイヤグラムに関連して,インスタントン・モノポールにまつわる良い図式の物理的解釈およびKobayashi-Hitchin 対応の弦理論的解釈を与えたい. そのためにたとえば2018年7月にインドのバンガロールで行われる国際会議「Quantum Fields, Geometry and Representation Theory」に参加し,Sergey Cherkis氏(アリゾナ大学)と緊密な議論を行い協同研究にまで結び付けたいと考えている. これまでの成果については,2018年6月に仙台で行われる国際会議「String-Math 2018」で発表予定である.その翌週の沖縄での国際会議「Strings 2018」にも参加しさまざまな参加者と議論を交わす予定である.また,英国ダラム大学のRichard Wardを訪問し, 昨年度から議論を続けている高次元インスタントンのLax形式・ツイスター理論の取り扱いの研究を進展させたい. こちらも共同研究を想定して2週間程度毎日じっくりと取り組む予定である. 周辺大学でのセミナー発表も同時に行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議参加費を打ち切り支給で節約し,また設備備品のMac miniを整備品として想定より安く購入するなどの努力により,次年度への繰り越し額が生じた.次年度は今年より国際会議への参加・成果発表は多くなることが予想されるので,適切な調整であると言えよう.今年度は成果発表のためモバイル用のMacbookを活用する必要性が高まることが予想され,Macbook12インチの新型版を購入する予定である. これによりいかなる場所においてもTeX入力が可能になり,論文執筆の効率も上がることが期待される.
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