研究実績の概要 |
平成30年度は前年度までに使用していた計算機が更新されたため、メビウスドメインウォールフェルミオンのSF法の計算コードの開発が途切れてしまい、計画していた非摂動計算の開発を進めることができなかった。 一方、これまでのメビウスドメインウォールフェルミオンのSF法を定式化する上で、格子場の量子論のくりこみや量子補正などの摂動計算を解析的に計算することの困難さについての認識を新たにした。このことから、格子場の量子論の摂動計算を、特に高次補正まで、数値的に自動的に行う方法である、確率過程数値摂動計算法(Stochastic Numerical Perturbation Theory, NSPT)について本年度は調査・研究を行った。ウィルソンクローバー型のフェルミオンのカレント演算子のSF法を用いた改良についてすでにNSPT を用いた2ループまでの摂動係数の計算の試みがTorrero-Bali (arXiv:0910.4138)らにより行われている。 NSPTについて習熟するために格子場の理論の1つであるツイスト境界条件を持つ体積縮小ラージN Eguchi-Kawai 模型(TEK模型)のウイルソンループの摂動計算をNSPTを用いて4ループまで数値計算した。 2ループまでの摂動計算は半解析的にGarc'ia P'erez,Gonz'alez-Arroyo, 大川により計算されており、NSPTの計算はそれを再現した。この研究は、Gonz'alez-Arroyo、大川、金森、上野、宮鼻らとの共同研究としておこなった。これらの結果は論文にまとめ査読付き雑誌に投稿中である。プレプリントはarXiv:1902.09847である。 この研究からNSPTの定式化と計算プログラムの作成方法について習熟することができた。NSPTをメビウスドメインウォールフェルミオンのSF法の摂動計算に応用する可能性がある。
|