研究課題/領域番号 |
16K05327
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
小田 一郎 琉球大学, 理学部, 教授 (40265517)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 偽のコンフォーマル対称性 / ワイル・横波方向の対称性を持つ重力理論 / 位相的な重力理論 |
研究実績の概要 |
本年度においては、研究課題に関係する8本の論文を作成し、そのうちの7本についてはすでに、論文雑誌に掲載されている。 まず、曲率密度を保存する横波方向の一般座標不変性と完全な一般座標不変性を持つ誘起重力理論の模型を構成した。この模型から生ずる場の方程式を解くことによって、アインシュタインの一般相対性理論が発生することを証明した。さらに、ニュートン定数が無限大になる極限において、この模型は位相的な重力理論になることを示した。 次に、本研究課題に直接的に関係する「ユニ・モデュラー重力理論」に存在する偽のコンフォーマル不変性について研究を行った。まず、コンフォーマル不変なスカラー・テンソル理論において、局所コンフォーマル不変性と大域的なコンフォーマル不変に対する二つのネーター流が厳密にゼロであることを証明した。このことは、この重力理論に存在するコンフォーマル不変性は、偽のコンフォーマル不変性であることを示している。普通、古典的なコンフォーマル不変性は、量子異常項によって壊され、量子論的にはコンフォーマル不変性は存在しないことが知られている。しかし、この重力理論に存在するコンフォーマル不変性は偽のコンフォーマル不変性であるために、量子論的にも成立することが期待される。もし、この予想が成り立つならば、この偽のコンフォーマル不変性を利用することによって、宇宙項の問題が解決できるかもしれないことを指摘した。 最後に、ワイル・横波方向の対称性を持つ古典的な重力理論を構成し、この理論に存在する古典解を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究の第一目標は、コンフォーマル不変な標準理論と局所スケール不変な重力理論を結合させた新しい理論を構成することであった。コンフォーマル不変な標準理論についてはまだ完成してはいないものの、局所スケール不変な重力理論については大きな進歩があったと思う。 まず、偽のコンフォーマル不変性をもつユニ・モデュラー重力理論を構成することに成功し、この理論に存在する古典解を明らかにした。古典解の中には、球対称なブラックホールを表すシュバルトシルク解や宇宙の急激な膨張を表すインフレーション解が存在することも証明した。また、この偽のコンフォーマル不変性を利用することによって、宇宙項の問題を解決できる可能性があることも指摘している。 次に、このユニ・モデュラー重力理論に局所コンフォーマル不変性をもつ物質場を結合させることにも成功している。ディラック場や電磁場は4次元時空において、自動的に局所コンフォーマル不変性を持っていることが知られている。我々は、スカラー場についても作用を適当に変更することによって、局所コンフォーマル不変性を持たせるようにすることができることも示した。したがって、物質場のもつゲージ群を標準模型のもつゲージ対称性SU(3)*SU(2)*U(1)に拡張することによって、コンフォーマル不変な標準理論も構成可能であることも期待できる。 我々の理論のもつ量子論的な側面はまだ未解決であるが、今後の研究によっても量子論的な振る舞いも解明できると期待している。
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今後の研究の推進方策 |
すでに昨年度の研究において、偽のコンフォーマル不変性をもつユニ・モデュラー重力理論を構成することに成功し、この理論に存在する古典解を明らかにした。また、この偽のコンフォーマル不変性を利用することによって、宇宙項の問題を解決できる可能性があることも指摘している。実際に、この理論に基づいて、宇宙項の問題を解決できるかどうかを調べてみたい。ただ、宇宙項の問題については、ワインバーグの駄目定理というものがあって、局所場の理論においては、宇宙項の微調整以外では、平坦なミンコフスキー時空が解として存在しないことが証明されている。したがって、我々の理論に、大域的な情報を盛り込んだ操作を導入する必要があると思われる。まず、この大域的な問題について考察したいと思っている。 次に、このユニ・モデュラー重力理論に局所コンフォーマル不変性をもつ物質場を結合させることにも成功している。よって、物質場のもつゲージ群を標準模型のもつゲージ対称性SU(3)*SU(2)*U(1)に拡張することによって、コンフォーマル不変な標準理論も構成したいと思っている。 我々の理論のもつ量子論的な側面はまだ未解決であるが、今後の研究によっても量子論的な振る舞いも解明できると期待している。 最後に、もし我々の理論が無矛盾な理論であれば、その他の未解決な問題、特に、ゲージ階層性の問題や強いCPの破れの問題に対しても応用可能であることが期待されるので、これらの問題についても考察したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内旅費に使用するつもりであったが、先方からの補助があり、科研費の旅費を使う必要がなくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
国内旅費や謝金として使用するつもりである。
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