研究課題
本年度は、7本の単著の論文が外国雑誌に掲載された。またイタリアのパドヴァ大学で開かれた国際会議に招待され、約50分間の招待講演を行ってきた。具体的には、共形不変な重力理論から出発し、一般座標変換の一つ、つまり縦波方向の変換、をゲージ固定することによって、共形不変なトランスバース重力理論を構成した。さらに、この理論の古典解として、ブラックホール解が存在することも証明した。さらに、現代の素粒子物理学の最大の謎である「宇宙項の問題」に挑戦した。まず、この問題を解決するには、宇宙項が量子補正で安定であることが重要であることを指摘した。次に、今までの場の量子論のアプローチの仕方では、この問題を解くことは不可能であることも指摘し、非局所的な操作、つまり、全時空で演算子の平均をとる操作、が必要であることを指摘した。また、今まで証明されていた古典重力で成り立つワインバーグの駄目定理が、量子重力理論の範疇においても成り立つことを明確な形で証明した。特に最近、「漸近的に安全な量子重力理論」を用いて、宇宙項の問題を解こうとする論文が多く出版されているが、本定理を利用すれば、そういった試みは間違いであることがすぐに証明できる。しかもこの証明では一般座標変換に発するBRST変換と量子補正を含んだ有効作用の存在だけを仮定しており、具体的な作用の形に拠らないので、一般の量子重力理論に成り立つ非常に強力な定理である。
2: おおむね順調に進展している
共形不変な重力理論の構成し、その内容を調べることには成功している。ただまだヒッグス粒子を含んだ満足すべき共形不変な重力の構成には成功していない。素粒子の標準模型、特にヒッグス粒子、を組み込んだ共形不変な重力を構成すべきである。
今後は、まず共形不変な重力理論に素粒子の標準模型を組み込んで、量子補正の効果によって、共形不変な重力からアインシュタインの一般相対性理論が誘起されてくることを証明したいと思っている。次に、この理論の繰り込み群を調べて、共形不変な重力理論から標準模型を超える理論が構成できるかを調べてみたい。
次年度に外国の研究者1名を琉球大学に招待したかったため。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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