前年度までに構成した宇宙項に対する非局所化のアプローチを、宇宙の加速膨張のモデルに適用した。このモデルでも、宇宙の加速膨張を説明できることも示した。重力場の量子効果が取り入れられているので、今までの模型より、理論的により優れた模型である。 また、昨年度証明した宇宙項に関する古典重力のワインバーグ定理を量子重力理論に拡張した。この定理の証明では、BRST対称性と有効作用の考えがフルに利用されている。量子重力理論においても、古典重力理論と同様に、ワインバーグのダメ定理が成り立つことが証明された。この定理のおかげで、ディラトンなどの外部場を導入しても、宇宙項の問題は解決できないことを明確に証明した。 さらに、局所共形対称性を持つ理論から出発し、コールマン・ワインバーグ機構を用いて、高階の重力子の量子効果によって、局所共形対称性が自発的に破れて、低エネルギーではアインシュタインの一般相対理論が導出されることを示した。この模型に、共形対称性をもつ相互作用を加えると、プランクスケールから電弱理論のエネルギースケールが自然な形で導かれることも示した。この理論は今後、「階層性の問題」を解決する手掛かりを与えてくれると期待している。
|