研究課題/領域番号 |
16K05330
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
安倍 博之 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (10402760)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 素粒子統一模型 |
研究実績の概要 |
素粒子標準模型が内包するゲージ階層性と質量階層性や暗黒物質の問題を説明できる可能性をもち、素粒子統一理論の有力候補の一つとされる高次元時空の超対称理論に対し、具体的な素粒子模型の構築とそれらの現象論及び宇宙論的性質の解明に向けた基礎研究を行った。物質を含む量子重力理論の最有力候補である、超弦理論の臨界次元として知られる10次元時空を出発点として、標準模型の粒子組成と相互作用を再現する上で有望な、背景磁場をもつコンパクトな余剰空間を想定することで、現実的な素粒子模型の構築を試みた。このような枠組みでは、余分な粒子が脱結合するようなオービフォルドと呼ばれる商空間が先行研究で導入されていたが、そこでは系の安定化とゲージ階層性の説明に必要な超対称性を(低エネルギーまで)保つのが難しいことが知られていた。これに対し、本研究では背景磁場に対して荷電粒子の真空期待値を考えることで、新たなクラスのオービフォルド模型が構築可能であることを示し、その具体例としてニュートリノの超対称パートナーが期待値をもつことで超対称性が保たれるような模型を提案した。これは高次元超対称模型の現実的なクラスを拡げる重要な成果であると考えている。また、このような枠組みでの余剰次元の安定化と(低エネルギーで現象論的に要求される)超対称性の自発的破れのメカニズムや、(電弱スケールの生成と安定化に寄与する)標準模型一重項を含むような模型の拡張に関する研究も行い、それぞれ幾つかの興味深い成果が得られているが、これらは次年度に継続する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究実施計画のうち、モジュライ固定と超対称性の破れのセクターの詳細な解析にはもう少し時間がかかりそうであるが、おおむね計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きモジュライ固定と超対称性の破れのセクターの詳細な解析を行った後、当初の予定通りこれまでに同定した模型の現象論と宇宙論を展開して、最新の実験観測データとの比較検証を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実際に要した旅費の内訳が当初の見積もりとずれたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の旅費として使用する。
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