研究課題/領域番号 |
16K05331
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
太田 信義 近畿大学, 理工学部, 教授 (90167304)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 量子重力理論 / 漸近安全性 / くりこみ群 / ゲージ依存性 / 背景場依存性 |
研究実績の概要 |
今年度は目標としていた4次元の量子効果を取り入れた有効理論の背景場非依存性を調べるために、背景場が双曲空間になっている場合の有効理論をf(R)の場合に求めた。その結果、これまで調べられてきたコンパクトな背景の場合と大きく違い、解の収束性が悪くなることが確認できた。この物理的な理由については今後の検討が必要である。また、ゲージの取り方や、計量の定義の仕方への依存性を調べるために、パラメーターを含む一般的な形を用いて有効作用を求め、計量の形をうまく取ったときに有効作用のゲージ依存性がかなりなくせること、さらに2つのパラメーターの値が同等であるという双対性を発見した。この物理的な意味についても検討中である。さらに、時空背景場のスケール依存性をなくせるような定式化を与えた。最後の成果は非常に重要なものだと考えている。以上の成果は4つの学術論文として発表した。 また、2016年6月25日から7月2日にかけて中国長沙で行われた国際研究集会2016 Annual Meeting of the Division of Gravitation and Relativistic Astrophysics of Chinese Physical Society、8月17日から19日に韓国ソウルで行われたInternational Workshop for String theory and Cosmology 2016、10月に京都で行われた第6回日大理工・益川塾連携シンポジウム、11月に大阪大学で行われたInternational Workshop on "Theoretical Particle Physics 2016"において招待講演として発表し、いろいろな研究者に関心を持ってもらえた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では有効理論のゲージ依存性や背景場依存性を調べ、それを回避する方策を探すこと、また一般的な有効理論を探すことが目標であったが、ほぼそれを達成している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの研究が順調に進み、任意の次元、任意の背景場上での重力の量子効果が計算できている。そのゲージ依存性はかなり回避することができることがわかった。これにより、有効理論の物理的意味が明白となり、考えている理論が重力の量子論を与えることの証拠が得られつつある。今後はさらに物質場を結合させた場合に、重力の量子効果がどのように現れるかという問題と、このアプローチでユニタリー性がどうなるかを検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた物品費を大学予算でまかなうことができた。また、イタリアよりPercacci教授を招聘する予定であったが、本人に時間的な余裕が無いため実現しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
重力の量子論として意味のある理論が得られ、その量子効果を考えることができることを目指す。この成果を種々の国際研究集会において発表し、さらなる議論を深めていくための外国、および国内旅費を主たる支出として考えている。本年5月にはイタリアのトリエステにいる共同研究者のRoberto Percacci教授を訪問し,議論および共同研究を行う。また中国成都市で行われるThe 2017 Annual meeting of the Division of Gravitation and Relativistic Astrophysics of the Chinese Physical Societyに招待されており、これらの成果について発表する予定である。これらには、専門家が多く参加するので、研究のさらなる発展が見込める。
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