研究課題/領域番号 |
16K05333
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研究機関 | 釧路工業高等専門学校 |
研究代表者 |
梅津 裕志 釧路工業高等専門学校, 創造工学科, 准教授 (90393420)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ブラックホール / ホーキング輻射 / 量子異常 / 高階スピンカレント |
研究実績の概要 |
平成28年度は事象の地平近傍における計量の変形の自由度と,その変形によるホーキング輻射への影響について研究を行なった.以前から漸近的に平坦な時空の場合に,無限遠方での境界条件を変えない計量の変形の自由度と,それらの変形に対応した対称性(BMS対称性)が存在することが知られていた.近年これをブラックホールを含む時空に適用し,事象の地平近傍の計量の変形を考慮することにより,ブラックホール・エントロピーなどの熱力学的性質を導出する研究がなされてきた.本研究では,角運動量を持つブラックホール(カー・ブラックホール)の場合に,事象の地平近傍における計量の変形の自由度について考察し,その時空上の物質場の高階スピンカレントの量子異常を用いてホーキング輻射に対する影響を評価した.この手法においてホーキング輻射は,事象の地平近傍における計量の特異性と,無限遠方にいる観測者とブラックホールに落下していく観測者の間の座標変換によって決定される.今年度の研究では,無限遠方にいる観測者とブラックホールに落下していく観測者の間の座標変換を通常のカー・ブラックホールの場合に用いられる変換と類似のものに限定して解析し,その結果,事象の地平近傍における計量の特異性は変形を受けないため,ホーキング輻射は影響を受けないことが明らかになった.現在,これに無限遠方にいる観測者とブラックホールに落下していく観測者の間の座標変換の自由度も含めた解析を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
変形された計量を持つブラックホールの場合に,無限遠方にいる観測者とブラックホールに落下していく観測者の間の適切な座標変換を決めるには,様々な物理的考察を必要とする.ホーキング輻射に対する影響を評価する上でこの座標変換の効果の解析が終わらなかったため,上記のように評価した.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,平成28年度の研究を継続し,無限遠方にいる観測者とブラックホールに落下していく観測者の間の適切な座標変換を決定することによって,ホーキング輻射への解析を完成させる.この研究に基づき,事象の地平の変形の自由度とそれに関連した対称性と,高階スピンカレントとの対応関係が存在するかどうかを明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
日本物理学会への出張が3月17日から20日であったので,旅費の精算が4月になったため.航空券を早期に購入し,予定よりも安価になったため.
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次年度使用額の使用計画 |
学会,研究会等への出張費用として使用する予定である.
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