研究課題/領域番号 |
16K05334
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
長谷部 一気 仙台高等専門学校, 総合工学科, 講師 (60435469)
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研究分担者 |
柴田 尚和 東北大学, 理学研究科, 准教授 (40302385)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | トポロジカル絶縁体 / 相対論的ランダウ模型 / ワイル半金属 / 非可換幾何 / 量子ホール効果 / 量子光学 |
研究実績の概要 |
本年度行った研究は以下の3点である。①3次元の球面上のランダウ模型(SU(2)磁場中のワイル半金属)の解析結果を応用した3次元量子ホール系の擬ポテンシャルの解析。②.トポロジカル絶縁体の表面状態における質量項の及ぼす物理的効果についての研究。③.不定計量を有する非可換幾何構造(高次元の非可換双曲体)の構造を量子光学に応用したスクィーズド状態の構築。
①:昨年度から行っていた3次元の球面上のランダウ模型の固有値問題の解析を完成させた。更にその一体問題の結果を多体問題に応用し、3次元の量子ホール系の擬ポテンシャルの形を解析的に導出することに成功した。数学的表式に基づき、物理的意味について考察中である。 ②:昨年度、相対論的な電子系のグラフェンにおける質量項の問題を研究分担者の柴田氏とその東北大院生と行った。その研究を今度はトポロジカル絶縁体の表面電子状態について、質量項が存在する場合に応用する研究を行った。今年度も数値的な計算を柴田氏とその大学院生に担当して頂いた。結果を出すことには成功したが、先行研究の結果と比べて著しい違いが認められなかったため、論文にまとめるには至っていない。一方、研究分担者は質量がある場合のディラック電子の研究を現実の系に応用し、バレー自由度があるグラフェンの場合に拡張し最近の実験との比較を行った。 ③:非可換幾何の新たな応用の可能性として量子光学で重要なスクイーズド状態について議論した。昨今、我々が提案したスプリット四元数の非エルミートなハミルトニアンをきっかけとする非エルミートなトポロジカル状態の物理が急速に発展している。それと同様のスプリット四元数の数理を量子光学に応用し、Sp(4; R)スクィーズド状態の理論的な構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、主に議論した一体物理である3次元球面上のランダウ問題を今年度は多体物理へ拡張する試みを行った。そのための第一歩である擬ポテンシャルを導出することに成功した。このように滞りなく進展している。また、質量項を有する相対論的量子ホール状態の応用として現実のバレー自由度を有するグラフェンとの実験との比較が出来た。一方、非可換幾何の新たな応用の可能性である量子光学への応用を見出すことが出来た。これは想定外の進展である。これらについては研究はおおむね順調または一部、想定外の進展を見せていると言ってよい。一方、トポロジカル絶縁体の表面状態についての研究については残念ながら既存の研究に多少の修正が加えられたのみの結果で、有意な研究成果を見出すに至っていない。 総合的にみると、大きく進展している部分とそう言い難い部分もあるが、あえて区分すると「おおむね順調に進展している」に対応すると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
3次元ランダウ模型を用いて擬ポテンシャルの導出を行ったが、その物理的意味については考察中である。その物理的意味を明らかにするために、それが埋め込まれている4次元の物理の観点から解析することを予定している。以前、研究をしていた偶数次元の量子ホール系の研究を基盤に研究していくことを計画している。また、量子光学のスクィーズド状態への応用も引き続き研究を行っていきたいと考えている。具体的には、高いシンプレクティック群に基づく構成や、超対称性を取り入れたスクィーズド状態への拡張を考えている。更に、10年ほど以前に構築した非可換双曲体の研究が、近年行列理論における不定計量の解の構築に応用されている。非可換双曲体についての新たな研究も再び推進していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の経費と合わせてコンピューター用品を購入する予定である。
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