研究課題/領域番号 |
16K05335
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研究機関 | 香川高等専門学校 |
研究代表者 |
黒木 経秀 香川高等専門学校, 一般教育科(詫間キャンパス), 准教授 (40442959)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 弦理論 / 行列模型 / 摂動級数 / 超対称性 |
研究実績の概要 |
我々が以前から研究してきた超対称行列模型およびそのdouble scaling limitの下で、超対称不変でない演算子の1点関数を考えた。超対称性を持たない演算子の相関関数を高次まで求めることは一般に困難であるが、我々の行列模型の場合、模型自体の持つ超対称性を反映して、Nicolai mappingを用いることにより、相関関数がGaussian matrix modelの量を用いて導出できることに気づいた。Gaussian matrix modelの範疇としては分数べきの演算子を考えることに相当するが、そのwell-definedな計算方法を与え、結果として超対称不変でない演算子の1点関数を、弦結合定数(double scaling limitにおいて固定するパラメーター)に関する展開の全次数で求めることができた。すると展開の各次数はdouble scaling limitで有限であり、我々が予想したdouble scaling limitがきちんと取れていることが分かった。また、展開の具体形を見ると、弦理論の摂動展開特有の形をしていることも明らかになった。これらの事実から、我々の行列模型がdouble scaling limitの下で期待通り少なくとも何らかの非臨界超弦理論を定義していることが分かった。これによりtarget spaceの超対称性を持つ非臨界弦理論の非摂動的定式化の初の例を与えたことになる。また、その摂動級数のambiguityをBorel和により求めると、one-instanton sectorからくるambiguityとleadingで打ち消し合うことが分かり、1点関数についてはresurgenceの成立が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超対称行列模型の超対称不変でない演算子の1点関数の摂動級数を陽に有限な形で求めることに成功し、またそのBorel和のambiguityがinstantonの寄与のambiguityによって消されるというresurgenceがleadingで成立していることも確認され、研究は計画通り進んでいる。2点関数の表式も得られ、現在その各項の計算に入っている段階である。一方、対応する超弦理論側の計算がまだ完成していない。行列模型のinstantonの対応物が何であるかも明確になっていない。
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今後の研究の推進方策 |
超対称不変でない演算子の2点関数についても陽な表式がすでに得られているので、各項の計算を行い、1点関数と同様に摂動展開の全次数の表式を求める。また、1点関数についてresurgenceが成立していることを、subleadingについても確認したい。現在一部の場合について不一致が見られるだけであるが、one-instanton sectorにおいてすべての寄与を取りこんでいないためであることが分かりつつあるので、Lefschetz thimbleを用いるなどして解決する。一方、超弦理論側の種数1のRR1点関数の計算を行い、行列模型との摂動論的一致を見る。また、超弦理論側でD-brane背景中の相関関数を調べ、行列模型のinstantonの対応物を調べる手がかりとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力者の杉野文彦氏が岡山光量子研から韓国に異動になったため、研究打ち合わせに行く機会を持つことができなかった。また、パソコンを購入予定だったが、以前の科研費の支援を受けて購入したパソコンで研究を遂行できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果が溜まってきたので、韓国で研究打ち合わせを行う旅費として支出する。また、現在のパソコンが遅くなってきたため、新しいパソコンを購入する費用として支出する。
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