我々が以前から2次元type IIA超弦理論の非摂動的定式化の候補として提唱している超対称行列模型の解析を主に行った。この模型はtarget spaceの超対称性が自発的に破れる初の超弦理論として存在価値が大きく、そのため先行研究では、超対称性の破れのオーダーパラメターであるスカラー場の偶数べきの相関関数が主に解析されており、奇数べきの相関関数はtree levelで求められているのみであった。本研究では奇数べきの1点関数を、弦結合定数による展開の全次数で求めることに成功した。具体的にはNicolai mappingを用いて奇数べきの多点相関関数をランダム行列理論の相関関数で表し、ランダム行列理論の1/N展開の全次数の既知の結果を用いて得られた結果であり、展開の各次数で厳密である。さらにその展開係数は各次数で有限で、特に高次展開係数は弦理論特有の振る舞いを持ち、このことは我々が提唱してきたdouble scaling limitが、確かに低次元の超弦理論を定義していることを示している。また、展開係数からこの超弦理論の非摂動効果を読み取ると、それは以前解析した、超対称性の破れを引き起こす行列模型のインスタントンのウエイトを再現することが分かった。さらにこの1点関数にresurgenceを適用し、鞍点を通るように積分路を変形すると、subleadingのオーダーまでインスタントンの寄与を再現することを示した。よってresurgenceの成立を確認し、その際には積分路の変形が本質的な役割を果たすことを指摘した。以上の結果から、奇数べきの相関関数の摂動展開が、超対称性の自発的破れとインスタントンを通じて関係していることが明らかになった。さらにこの結果を拡張し、奇数べきの2点関数の全次数の結果も得た。その表式は、展開の各次数において、それより低次の展開係数の和が残るものになっている。
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