研究課題/領域番号 |
16K05337
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
溝口 俊弥 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (00222323)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 超弦理論 / F理論 / 素粒子模型 |
研究実績の概要 |
F理論とは、弦があるブレーンを周回したときに初めとは異なる双対な弦になるとき(モノドロミー)、それらを同一視して得られる超弦の非摂動論的コンパクト化である。特に、素粒子模型の構築において (1)現実の素粒子のハイパーチャージを合理的に説明 (2)1つの世代を包摂する SO(10) のスピナー表現の物質場を実現 など、D-ブレーン模型では実現できない大きな利点をもっており、また基本的にタイプIIB理論の枠内で構成されるため、モジュライ固定が容易でインフレーション模型の構築に適している。今年度はまず、超対称性を半分保つK3曲面の特殊な極限(stable degeneration) において現れる有理楕円曲面(rational elliptic surface)のセクションがなす モーデル・ベイユ群の小木曽・塩田の74種の分類中、非カルタン型に対応するワイエルシュトラス形式を具体的に構成し、双対なヘテロティック弦側の指数定理によるスペクトラムとの一致を示した。また、ピカール数が19から特別なモジュライ空間の点で20になるようなK3曲面にコンパクト化した F理論について調べた。さらに、ミラー対称性を用いて得られた本間・大塚によるF理論のスカラーポテンシャルについて、そのスカラーダイナミクスについて詳しく調べ、F理論におけるインフレーション模型の構築に向けた研究を行った。 一方、最大に超対称なゲージ化超重力理論におけるインフレーション模型を、超対称性の低い超重力に拡張するため、5次元マジカル超重力とよばれる4つの超重力理論のうち、複素数体に対応する理論の次元リダクションとその双対性に関する研究も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究成果ならびに情報収集の結果、現実的な素粒子模型とインフレーションを同時に単一の理論の枠内でF理論を用いて実現するための知見が集まり、目指すべき研究推進の方向性がかなり固まってきている。論文や招待講演などの研究成果発表もコンスタントに行われ、また研究会・ワークショップなどの開催を通じて連携して研究できる人的なネットワークも整ってきた。
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今後の研究の推進方策 |
F理論による、現実的な標準模型セクターを含んだモジュライ固定/インフレーション模型の構築に向けて(1)3世代の標準模型粒子をすべて局所的に実現する E7ポイント近傍でのブレーンインフレーション機構(2)モーデルベイユ群のランクがある程度高いカラビ・ヤウと U(1)ゲージ対称性、特にアノマラスU(1)による FI項生成と超対称性の破れ、ならびにフロガット・ニールセン機構による湯川結合の生成 (3)ミラー対称性を用いたモジュライ固定ならびにインフレーション模型構築 などについての研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
生じた次年度使用額は、前年度からの繰越しや物品費の積算時との価格変動などによる比較的少額なものであり、全支出額の2パーセント程度に止まる。翌年度分助成金の旅費または物品購入の一部に補填する。
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