研究実績の概要 |
本研究は、「なぜクォーク・レプトンは三世代なのか?」のような素粒子理論の根源的な疑問に答えることはできない超弦による素粒子模型構築の従来のパラダイムを見直し、コンパクト空間の詳細によらない普遍的かつ局所的な幾何学構造から標準模型が創生するシナリオを非摂動論的な超弦理論である F理論と呼ばれる枠組みで実現し、標準模型を超えた新物理、特にヒッグズセクターやフレーバー構造に関する具体的な提言を行なうことを目的として立案された。具体的には、例外群のコセットE7/((SU(5)×U(1)^3)超対称シグマモデルがちょうど3つのSU(5)の10+5*+1 の超対称多重項を含むという事実に基づき、その超対称パートナーを標準模型のクォーク・レプトンと同一視する「世代統一」(familyunification)のアイデア(九後・柳田模型)をF 理論の多重特異点に局在するストリングジャンクションを用いて実現して、その新しいコンパクト化の理論的性質を調べた。その結果得られた最も重要な研究成果は次の通りである。 (1)F理論の多重交差のうちE7あるいはE8ポイントと呼ばれる特異点近傍に実際に世代統一に必要な物質場が少なくとも6次元では局在しうることをアノマリー相殺の議論を使って示した。余剰次元の一点に標準模型のセットが局在するということは、ランドール・サンドラム型模型でしばしば仮定されるブレイン構成が超弦の枠内で初めて実現したということを意味する。 (2)タイプIIB理論の一つのコンパクト空間に摂動論的及び非摂動論的レジームが同時に共存/隣接することがF理論の本質であることを、「モノドロミフォルドプレイン」と呼ばれるある種のブレイン的オブジェクトを導入することにより明らかにした。それにより(p,q)ブレインやO-プレインのサブ構造、ならびに及びそれらを繋ぐストリングジャンクションの実体が解明された。
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