研究実績の概要 |
本年度の研究実績は次の通りである。 1. N=40-82において,keyとなるZr原子核(80Zr, 90Zr, 96Zr, 100Zr, 104Zr, 108Zr, 114Zr, 120Zr)に対して拘束条件付き軸対称Hartree-Fock計算を実行し,中性子数に依存した構造変化の様子,またそれらと核子間相互作用の関わりを調べた。M3Y型半微視的相互作用により,従来の平均場計算では再現が困難であった80Zrの変形が得られた他,96Zrの二重閉殻性,100Zrのprolate変形が確認され,また114Zrでのoblate変形への転移,120Zrでの球形への転移が予言された。さらに,テンソル力の効果として,変形によるhigh-j軌道の混入が変形を妨げることが分かった。 2. 対称エネルギーに関する2次近似の精度を可能な限り解析的に調べ,核子間有効相互作用の性質との関わりを明らかにした。特に,中性子物質の状態方程式に関する微視的計算が2次近似の精度をある程度保証すること,Gauss型相互作用では高密度でそれが困難になることを指摘した。 3. 中性子ハロー形成に対する,対相関と変形の役割を調べた。前者についてはanti-halo効果が論じられてきたが,それはeven-N核に限られ,odd-N核ではむしろhaloを増進することを指摘し,Mg核を例として,原子核により変形の効果と協力的であったり競合的であったりすることを示した。 4. 準粒子RPA計算コードの主要部分を改良し,分散メモリー型並列計算に適合させた。今までcut-off energyに対する収束が確認できなかったが,これにより十分に大きなcut-off energyの下での数値計算が可能となった。
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