研究実績の概要 |
1. M3Y型半微視的相互作用を用いた軸対称ハートリー・フォック(HF)計算及び拘束条件付きHF計算を実行して,陽子ドリップ線近傍から中性子ドリップ線近傍に至る広い領域でZr原子核の構造変化を調べた。従来の平均場計算では困難であった80Zrの変形が自然に再現された他,96Zrの二重閉殻性,100Zrのプロレート変形が確認され,また114Zrでのオブレート変形への転移,120Zrでの球形への転移が予言された。さらに,テンソル力の効果として,高j軌道の混入が変形を妨げることが分かった。HF+BCS計算により対相関がこれらの結論を大きく変えないことも確認した。なお,これらの計算のため,有限レンジ相互作用にも適用可能なガウス関数展開法を用いた平均場計算コードの改良を行った。 2. 原子核の荷電半径において,中性子数Nがmagic numberの時にキンクが現れること,それが3体LS力により説明できることを,ハートリー・フォック・ボゴリューボフ(HFB)計算を実行して指摘した。これはZr領域でN=56の二重閉殻性とも関連する。 3. 軸対称HFB計算を実行して中性子ハロー形成に対する対相関と変形の役割を調べ,odd-N核での対相関によるhalo増進の効果を明らかにした。 4. RPA方程式の解が2種類の双対性を持つことを見出し,不安定解まで含めたRPA解の全貌,及び対称性の破れの和則への寄与を明らかにした。また,準粒子RPA計算コードを分散メモリー型並列計算用に改良し,N=50近傍のZr原子核の低励起状態を調べて,M3Y型半微視的相互作用によるN=56の二重閉殻性の確認や低励起0+状態の出現等,実験データと整合する結果を得た。 5. 対称エネルギーに関する高次項の影響を解析的・数値的に調べ,核子間有効相互作用に用いる関数形,及び中性子物質に対する微視的計算との関わりを明らかにした。
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