研究実績の概要 |
時空の安定性を保証する正エネルギー定理の宇宙論への応用を行うため、Schoen&Yauらによる証明の解読を行った。証明が難解でるため、これには4年の歳月を必要とした。具体的には宇宙論への応用がしやす形で証明をやり直すことができた。現在、この成果を基に論文を準備中である。一方、その証明の中で鍵を握るブラックホールの基礎研究を行った。ブラックホール自体は観測できない。そこで、その周辺領域の数学定式化の一般化を動的な時空を含む形で行った。その際に、ブラックホールの外側に存在する光の不安定円軌道をお手本とした。具体的には、幾何学的な対象物(dynamically transversely trapping surface, DTTS)の提案を行った。また、このDTTSに対して不等式が成り立つことを証明した。その結果、シュバルツシルトブラックホールの光の不安定円軌道が成す面の面積以下であることがわかった。さらに、いくつかの具体例で数値的にその面の特定を行った。これらの結果は査読論文として発表された。加えて、面を囲む輪(フープ)の長さに対する考察も行い、いわゆるフープ予想、すなわち、長さが光の不安定円軌道の円周の長さ以下であることを数値的に示すことができた。この結果は2020年度に査読論文として発表されている。
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