研究課題/領域番号 |
16K05351
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
堀内 昶 大阪大学, 核物理研究センター, 招へい教授 (60027349)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | THSR波動関数 / Container模型 / ボーズ凝縮状態 / 不安定核 / TOAMD理論 / HM-AMD理論 / HM-TOAMD理論 |
研究実績の概要 |
変革したクラスター模型としてTHSR(Tohasaki-Horiuchi-Schuck-Roepke)波動関数を用いた研究としては、安定核においては、12Cの4つの負パリティ状態に対して2つのCotainerのTHSR波動関数が良い記述を与えることを明らかにした。また、16Oの基底状態から12C+α状態を経て4αボーズ凝縮状態へと変化する構造を2つのCotainerのTHSR波動関数が見事に記述することも明らかにした。これは、励起エネルギーの上昇につれて多彩なクラスター構造が形成される過程をCotainerの進化(Evolution)とするContainer模型の妥当性を示したものである。他方、不安定核においては、9B、10Be、10C、10Bの低励起状態が複数のContainerを含むTHSR波動関数の少数の重合わせでよく表現できることが示された。 核構造の第一原理計算の研究も大きな進展を見た。この研究はTOAMD(テンソル力最適化AMD)という新たに構築された第一原理計算理論に基づくものであるが、この基本部分の大きな発展展開が今年度に行われた。TOAMDはAMD波動関数に2体相関関数を演算した波動関数でによって核子間相関を表すのであるが、AMDの対の核子波束の複素座標パラメーターの虚数部分に非常に大きい値までを取らせることにより核子間相関を表すのである。この新理論をHM-AMDと名付けるが、TOAMDとHM-AMDの混合理論としてのHM-TOAMDも導入された。これらの新理論は、生の核力のAV8'の場合に、3Heと4Heの場合にTOAMDと同等の結果を生むことが実証された。既に多くの論文として出版され、質量数が5以上の原子核の研究に威力を発揮すると期待されている。新理論による核物質の研究も進展している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
THSR波動関数による変革したクラスター模型はその妥当性が当初の期待以上に実証されつつある。特に2つのContainerのContainer模型は励起エネルギー増加に伴うクラスター構造の進化の記述に強力である。ボーズ凝縮状態の形成が通常のクラスター状態の形成と質的に同等であるということが、クラスター動力学に対するContainer模型の適切さを良く示している。更に又、12Cの負パリティ状態やBe、B、C、の中性子過剰核の状態の記述に於いてクラスター構造の新しい様相をより柔軟に表現できる。 核構造の第一原理計算の研究に於いてはあからさまな形で当初の計画での予想を超えて大きな進展があった。それは当初計画の基本理論のTOAMD理論とほぼ同等な数値結果を与えることが実証された新しい理論としてHM-AMD理論とHM-TOAMD理論の2つの理論が構築されたからである。しかもこれらの新理論はすでに多くの論文として出版されている。
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今後の研究の推進方策 |
THSR波動関数による変革したクラスター模型の研究については、安定核においては、12Cの4つの負パリティ状態に関する研究と16Oに於ける励起エネルギー増加に伴うクラスター構造の進化の研究を論文にまとめて出版する。16O核の場合は、その上で更に多様なクラスター構造の高励起エネルギー領域での形成について研究のへと発展的に移行する。不安定核に於いては、9Bに対する研究は既に論文に纏められ投稿中であるが、次に、10Be、10C、10Bに対する研究を論文に纏めて投稿する予定である。 核構造の第一原理計算の研究については、今年度の大きな研究発展に基づいて、いよいよ0p‐殻の原子核の研究の実行に着手している。初めは、質量数が5の原子核に於いて励起状態として形成される正パリティの「3H+d」や「3He+d」のクラスター状態の研究を行う。これらのクラスター状態は「3H+d」や「3He+d」のクラスター状態に於いては「3H+p」や「3He+n」のクラスター状態に対応するので4He核の励起状態の研究も行うこととなる。他方で、核物質の研究をTOAMD理論に対応するTOFS(テンソル最適化フェルミ球)理論で進展させ、それに続いてHM-AMD理論に対応するHM-FS(高運動量フェルミ球)理論により研究を進展させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額の金額は約5万円であり、これは東京や横浜などに一度だけ出張する旅費の金額である。科研費計画の研究協力者との研究討議を東京あるいは横浜に於いて行う時期が当該年度末の3月であるよりは次年度の4月である方が研究計画の進捗状況から判断してより適切であると判断したことが次年度使用額が生じた理由である。従って、使用計画としては科研費研究計画の進捗にとってより効果的である。
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