研究課題/領域番号 |
16K05355
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
比連崎 悟 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (60283925)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | パイ中間子 / イータ中間子 / 中間子原子 / 中間子原子核 |
研究実績の概要 |
本研究では、現在までに行われてきた種々の中間子--原子核系の研究を発展させて、より正確で精密な知見を得ることを目指している。今年度の研究実績としては、まず、2010及び2014年度に理化学研究所で行われたパイ中間子原子生成実験に対応して、理論的な研究を進めた。具体的には、実験的に得られた断面積(特に角度分布)の理解と、そこから得られる物理的な情報の検討である。物理的情報としては、強い相互作用の対称性の様相に関するものが重要で、首都大との共同研究を進めている。これらの結果は、1年程度以内に論文にまとまると見込んでいる。 次にドイツのCOSYにおいて3度実験が行われた、重陽子融合反応による、η-4He 束縛状態生成反応の理論解析を進めた。具体的には、実験的に決定された生成断面積の上限値から、η中間子とヘリウム4原子核の間の相互作用に厳しい制限をつけられる解析を行った。この研究に関しては論文原稿を既に作成中であり、やはり1年程度以内には出版可能であると考えられる。 最後に、η(958)中間子原子核に関してであるが、当該年度中にGSIにおける実験結果の解析が進み、η(958)中間子と原子核の間の相互作用に関して情報が得られた。いくつかの理論予想が示すような、強い引力(もしくは大きな質量変位)の兆候は見られなかったが、今後の研究の発展に向けて重要な一歩を踏み出したと言える。軸性U(1)量子異常との関連で理論的な研究を発展させるのは、今後の課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
π中間子原子、η中間子原子核、η(958)中間子原子核に関しては順調に研究が進行している。また、K中間子の系に関しても、種々の検討が進められているため。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ、概ね順調に進展しているので、この状況を堅持してゆく。次年度の研究においては、各中間子の生成反応に関して、新たな実験方法の提案も視野に入れながら、広い視野をもって多角的に進めてゆく。
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