研究課題
本研究課題では種々の中間子-原子核系を利用して、原子核中における中間子の性質と強い相互作用に関して新しい知見を得ることを目的としている。以前の研究よりも、より精密な情報を定量的に得ることをポイントとしている。今年度の研究成果としては、パイ中間子と原子核の系に関しては、理研、東工大、鳥取大との共同研究を進展させ、理化学研究所において2014年に得られた精密な錫原子核同位体に深く束縛されたパイ中間子原子の実験データの解析を進めた。また、パイ中間子が2つ同じ原子核の原子軌道に束縛された2重パイ中間子原子に関して、パイ中間子間の相互作用を考慮した理論的な構造計算を初めて行なって、論文として出版した。K中間子と原子核の系に関しては、炭素12を標的とした 12C(K,p) 反応の missing mass 法を用いた実験結果を、実験研究者との共同研究をもとに解析し、通常のK中間子束縛系としては理解しがたい「余分な生成強度」が深く束縛した状態に対応するエネルギー領域に存在する可能性を示した。K中間子-陽子の系と強く結合するバリオン共鳴が束縛された新種のハイパー核の可能性も考えられる。この研究結果も論文として出版することができた。η中間子と原子核の系に関しては、陽子と重陽子を衝突させる実験において、3He原子核中にη中間子が存在する系を観測する試みに関して、国際共同研究に参画して研究成果を論文として出版することができた。最後に種々の中間子原子核の構造計算において、有意な影響を与える可能性がある、中間子と核子空孔の間の残留相互作用の効果に関して、研究を進展させることができた。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)
Progress of Theoretical and Experimental Physics
巻: 2021 ページ: 033D02(16pages)
10.1093/ptep/ptab023
Physical Review C
巻: 102 ページ: 044322 (9pages)
10.1103/physrevc.102.044322
巻: 2020 ページ: 123D01(34pages)
10.1093/ptep/ptaa139