平成30年度は、研究題目「中性子星から探る暗黒物質の物理」に基づく研究計画として掲げた内容のうち、以下の1点の成果をあげることができたのでここに報告します。
1つは「中性子星内部のさまざまな超流動渦の関係性」に関する研究である。これは以前、SchaferとWilxzekによって提案され、私自身を含む共同研究においてその具体的実現をおこなった「クォーク・ハドロン連続性仮説」に基づくものである。ここでは中性子星内部において存在が期待されるハドロン物質およびクォーク物質双方において発現する長流動状態に着目し、そこから創出される渦励起が両物質間でどのように関係付くのかを議論した。これは研究課題の中の一つ「暗黒物質と超流動」というテーマに大きく関わるものである。この研究成果は学術雑誌Physical Review Dに出版された。なおこれらの研究成果は多くの研究機関(慶応大学、北海道大学、ヤゲロニアン大学、サウサンプトン大学)で発表し、研究者らと新たな課題について議論することができた。
研究期間全体を通じて暗黒物質に対する理解は深まったが、中性子星との関係を具体的な形にすることができなかった。特に前年度におこなっていた「中性子星の冷却過程と暗黒物質捕獲」を論文にすることができなかったのは残念である。これは暗黒物質の模型構築などの専門家との連携が不足していたためである。だが引き続き挑戦したい。また中性子星連星合体による重力波の発見などの大きな話題についても、暗黒物質との関係を議論する研究が発表されたがそれに参加することができなかった。
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