ブラックホール時空の幾何学的構造を探る探査子としては,運動する粒子や宇宙ひもなどが考えられるが,最も重要なのは光である.カー・ブラックホール時空には光の不安定束縛軌道があり,これらはブラックホールの回転軸回りの角運動量とそれと関連したカーター定数と呼ばれるパラメーターでラベル付けされる.このパラメーターを変えていくと,軌道が存在する領域が変わるが,これらは,軌道とブラックホールの回転軸を含んだ1つの子午面との交点の集合で特徴づけされる2つのクラスの束縛軌道に分類されることを見出した.1つ目は,最大回転カー・ブラックホールの極限で,カージオイド曲線で特徴づけられるものであり,2つ目は,同じ極限で,ホライズンにいくらでも近づくものである. これら光の束縛軌道は,ブラックホールの周りを何度も周回するので,ブラックホールの周囲に広がった光源があったとき,それらの明るい像をまたらす.特に,後者のクラスは,光線束のシアーがゼロであり,光線束が広がらないものが可能であることになる.ゆえに,この光線束に対応する像では,他の場合と比べてさらに明るい像が得られることになる. また,光の観測では,像の形や明るさに加えて,偏光の情報をもたらす.直線偏光ベクトルは,曲がった時空中を平行移動されるが,カー・ブラックホールでは,Killing-Yanoテンソルおよび,共形Killing-Yanoテンソルが存在するために,光が何度周回するかによらず,光源の偏光ベクトルと遠方で観測する偏光ベクトルには一意的な関係があり,ブラックホールの質量,自転パラメーターと観測点の位置に依存するすることを明らかにした.これより,偏光ベクトルは,ブラックホールの重要な観測的プローブになることがわかった.
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