研究課題/領域番号 |
16K05359
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
辻川 信二 東京理科大学, 理学部第二部物理学科, 教授 (30318802)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 一般相対論 / 拡張重力理論 / ダークエネルギー / インフレーション / 重力波 / 宇宙の大規模構造 / 密度揺らぎ / ブラックホール |
研究実績の概要 |
本年度は主に,ベクトル場が重力と結合している一般的な枠組みであるベクトルテンソル理論に基づいて,宇宙の加速膨張を引き起こす有効な模型の構築とブラックホール解の構築を行った.特に,理論的な問題を含まない最も一般的な理論である,拡張されたプロカ理論に基づく暗黒エネルギー模型に対して,超新星,宇宙背景輻射,バリオン音響振動,宇宙赤方偏移空間での密度揺らぎの成長率のデータから観測的な制限を与え,標準的な加速膨張の模型である宇宙項よりも,観測的に好まれるという興味深い結果を得た.さらに同模型において,ベクトル場が物質場と結合している際に,ヴァインシュタイン機構という働きによって,宇宙の局所領域において第5の力の伝搬が抑制されることを示し,太陽系での局所重力の実験と整合的であることを明らかにした. これらの研究に加えて,ベクトルテンソル理論において新たなブラックホール解を構築し,ベクトル場の寄与によって一般相対論と異なる兆候がブラックホールの周りで現れることを示した.さらに得られたブラックホール解の周りで,摂動解析を行い,いくつかのブラックホール解がそのような安定性の解析によって棄却されることを示した.また,ブラックホール解から放出される重力波の伝搬速度を求め,それが重力波の観測とどのように関係するかを調べた.さらに,ベクトルテンソル理論を中性子星に応用し,ベクトル場の効果によって,観測と合うように中性子星の質量を増加させることが可能であることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
重力波の新たな観測データが2017年に得られたことによって,拡張重力理論に基づく宇宙の後期加速膨張の模型に強い制限を与えることが可能になった.さらに,拡張重力理論に基づいた新たなブラックホール解の構築に成功し,重力波の観測によってそのようなブラックホール解の現実性に関してテストできるようになった.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,スカラーテンソル理論およびベクトルテンソル理論を統一した,スカラーベクトルテンソル理論における宇宙論,特にダークエネルギー,インフレーション,密度揺らぎの進化に関する研究を行う.さらに,同理論におけるブラックホール解の構築を行い,拡張重力理論の兆候を様々な形で検証していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年3月の海外出張の際に必要な旅費が,科研費残額では不足していたため,それは次年度に回し,2018年7月の国際会議出張で使用する予定.
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