研究課題/領域番号 |
16K05361
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研究機関 | 日本社会事業大学 |
研究代表者 |
竹内 幸子 日本社会事業大学, 社会福祉学部, 教授 (90251503)
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研究分担者 |
瀧澤 誠 昭和薬科大学, 薬学部, 講師 (90297044)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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キーワード | エキゾチックハドロン / エキゾチックバリオン / 重いクォークを含む物理 / カラー8重項のバリオン / ハドロン物理学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、近年発見されたPc(4380)、Pc(4450)をはじめとする重いクォークを含むペンタクォーク系をバリオン-メソンの共鳴状態として記述し、その構造と反応を調べること、また、同様のエキゾチックバリオンを作る可能性のある他のチャネルを探すことにある。さらに、これらの系を系統的に調べ、現象論的なハドロン間相互作用と格子QCDから得られる相互作用とを比較し、低エネルギー領域におけるQCDの性質についての情報を得ることである。 平成28年度は、エキゾチックバリオンの存在可能性の評価として、Pc(4380)とPc(4450)に対応すると考えられる、uudccbarという重いクォーク反クォーク対を含み、かつ、軌道角運動量が0のクォーク5体系について、群論を用いて状態を分類し、クォーククラスター模型を用いてその性質を調べた。 その結果、群論を用いて、軽いクォーク3個がカラー8重項に組んだ配位がバリオン・メソン間に引力をもたらすことを明らかにできた。また、クォーククラスター模型を用いて、実際に束縛状態や共鳴状態が存在しうることを定量的に示した。これらの状態が、実際に観測されているPc(4380)、Pc(4450)のピークに対応するか否かは未だ結論できてはいないが、チャームクォーク対を含んだアイソスピン1/2の負パリティバリオン状態においてエキゾチックハドロンの存在の可能性を示すことができた。 さらに、バリオン・メソン模型に軽いクォーク3個がカラー8重項に組んだ配位を入れる方法によって、上記メカニズムをハドロン模型に導入したところ、クォーク模型と同様な束縛状態や共鳴状態をもたらすことを示すことができた。これにより、このメカニズムがある程度頑健であることを示し、また、高い軌道角運動量状態の寄与を含むエキゾチックハドロンの研究を進めることを可能にできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、1.平成28年度に「エキゾチックバリオンの存在可能性の評価」を軌道角運動量が0と1の系について行い、2.エキゾチックバリオンの定量的な評価を、クォーククラスター模型、ハドロン模型による実験の観測量の計算などで行う、3.格子QCDの結果との比較する等とであった。このうち1の軌道角運動量が0の場合、および、2のクォーククラスター模型の計算の全部と、ハドロン模型の計算の一部は終了している。3は現在検討中である。また、研究計画にはないが、ハドロン間にπ中間子交換を入れた計算を行い、それが全体像を変えないことを確認した。 これらの仕事は、当初の28年度の計画のおおよそ半分程度であり、本研究の予算執行の開始が平成28年10月下旬からとなったことを考えると、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、当初の計画では28年度に行う予定であって出来ていない部分、および、当初計画で29年度以降に行う予定であったものについて研究を続ける。具体的には、ハドロン模型により実験の観測量に対応するLambda_bからの崩壊スペクトラムを求めること、正パリティの系、ストレンジネスの入った系や、軽いクォーク対が入った系について調べ、また、格子QCDとの比較をする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
科研費の交付決定が28年度10月下旬となり、研究の開始がそれに伴って遅れたため、残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
全研究期間4年を3年半に縮め、それに準じた利用を行う。
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