| 研究課題/領域番号 |
16K05364
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| 研究機関 | 関西学院大学 |
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研究代表者 |
鵜沢 報仁 関西学院大学, 理工学部, 理工学部研究員 (50378931)
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| 研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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| キーワード | 超重力理論 / 超弦理論 / 宇宙論 / 一般相対性理論 |
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| 研究実績の概要 |
本年度の研究では、11次元超重力理論の時間依存（動的）M-brane解を構築し、その解の持つ時空構造や特異点の性質を議論した。また、得られた時間依存解から導かれる高次元宇宙の進化及び超対称性の破れについて明らかにした。11次元超重力理論にはアインシュタイン方程式の厳密解として動的M-brane解と呼ばれるものが存在する。動的M-braneは背景時空が時間に依存し、超重力理論においても自然に現れる基本的な物体であることから、高次元重力理論の動的性質を探るための一例として様々な角度から研究されてきた。また、動的brane解には背景時空に裸の特異点が出現することが知られており、宇宙検閲仮説が破れる幾つかの例が研究代表者の過去の研究で報告されている。このような状況を踏まえ、本年度は11次元超重力理論において超対称性を保つ時間依存解の存在の有無について調べた。その結果、11次元超重力理論には背景時空が時間に依存しつつ超対称性を保つ古典解(M2-brane)が特殊な条件のもとで存在することが分かった。超対称性の有無はM-braneの持つエネルギーの非一様性に強く依存し、背景時空がM-braneの世界体積座標（M-braneが広がっている方向の空間座標）に依存していない一様時空な解は、超対称性が保持されない。従って、初期宇宙で存在していた超対称性が、宇宙膨張とともにこの非一様性が失われることにより次第に破れることが明らかとなった。更に、M-braneからの距離に応じて時空構造のみならず超対称性の個数も変化することが判明した。一方、動的brane解に特有の特異点については、この時間依存M2-brane時空上には裸の特異点が出現するものの、潮汐力の発散は認められず、計量の正則性は保持されるという結果が得られた。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は、超弦理論に現れる動的brane解を構築し、black holeや宇宙論への応用を念頭に、それが持つ物理的な性質を一般相対性理論の観点から明らかにすることである。現在までの研究により、得られた時間依存解を基に超対称性の有無や破れのメカニズムの解明、膨張宇宙上のblack hole、時空構造の性質に関わる研究成果が得られており、研究は概ね順調に進んでいる。しかしその一方、動的brane解を基に現実的な宇宙模型を作ることや特異点問題の解消については解決出来ていない。このような現状認識のもと、現在、超弦理論において超対称性を持つ時間依存解の構築について研究を行っている。現在までに得られた結果として、超弦理論の低エネルギー有効理論である、10次元超重力理論には背景時空が時間に依存しつつ超対称性を保つD-brane解が特殊な条件のもとで複数存在することが分かった。これらの中には4次元宇宙モデルの候補と期待される解も含まれており、研究の進捗状況に問題は無い。
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| 今後の研究の推進方策 |
今後は超弦理論における4次元宇宙模型の構築する研究を行う。平成30年度はインフレーションモデル及びエキピロティックモデルを超弦理論から導くことができるかどうかを明らかにする。我々の4次元時空を再現するモデルとして、宇宙初期に指数関数的な膨張を起こしたというインフレーションモデルがある。インフレーションモデルは宇宙の大域的一様・等方・平坦性を実現するとともに、量子揺らぎの生成によって構造形成の初期条件を与える、現代宇宙論に不可欠の存在である。本研究では10次元II型超弦理論における高次元アインシュタイン方程式の宇宙論解を追求し、アインシュタイン方程式の解を基に4次元宇宙及び内部空間の時間進化について明らかにする。もし得られた時間依存解が加速膨張する時空を導かない場合、高次元時空の計量や背景に含まれる物質場の設定を変更して4次元加速膨張時空を含む解の構築を行う。一方、超弦理論により動機づけられたエキピロティック宇宙論はインフレーションの代替模型として知られ、元々は高次元時空上に置かれている2枚のブレーンの運動により宇宙の膨張・収縮を繰り返すサイクリック宇宙モデルを与える。ここで、ブレーンの運動は4次元有効理論のスカラーポテンシャルで与えられ、エキピロティック宇宙を再現するためにはポテンシャルの傾きが急でかつポテンシャルエネルギーが負であることが条件となる。ところが超弦理論では、許される物質が理論の無矛盾性から厳しく制限されており、この条件を満たす現実的な宇宙モデルを得ることは容易ではない。このような状況を踏まえ、宇宙の観測結果と整合的なエキピロティック宇宙を超弦理論の最も単純な模型から実現できるかどうか調べ、それが困難な場合は内部空間の変更や超弦理論に生み出される種々の補正要素（高次曲率項や orientifold plane）を加えることを試みる。
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