研究課題/領域番号 |
16K05365
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研究機関 | 群馬工業高等専門学校 |
研究代表者 |
高橋 徹 群馬工業高等専門学校, 一般教科(自然), 准教授 (70467405)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 格子QCD / ハドロン物理 / ハドロン散乱 / カラー励起 / Λ粒子 / チャームクォーク |
研究実績の概要 |
1.「2つの異なる対称性におけるハドロン構造の関係に着目した研究」 Λ粒子の内部構造を同定するため、内部フレーバー構造のクォーク質量依存性(ストレンジクォークをチャームクォークの質量まで連続的に変化させる)を格子QCDを用いて、詳細に解析した。その結果、低励起状態のudc-Λ粒子のフレーバー構造を特定することに成功した。それらの結果はクォーク模型のモデル計算と比較され、udc-Λ粒子内部のダイクォーク構造も同定した。また、ダイナミクスの対称性がフレーバーSU(3)対称性からヘビークォーク対称性へ移行する様子を定量化し、ハドロン内部でダイクォーク自由度が発現するエネルギースケールを解明した。これらの結果はPhysical Review誌に掲載されている。
2.「ハドロン内部におけるクォーク相関の研究」 ハドロン内部におけるクォーク相関を探るための準備計算を行った。どの自由度の相関に着目すべきかを探るため、まずはハドロン散乱におけるカラー自由度の発現の様子を、SU(2)格子QCDを用いて解析した。その結果、ハドロン同士が接近するときは、カラー1重項に属する個々のハドロンが、カラーを持ったハドロン(マルチハドロン系を構成していると解釈できる)へと変化する様子を突き止めた。この時、自明なカラー成分と区別するための手法も考案し適用した。これらカラー自由度の発現の強さ、および、発現するレンジのクォーク質量依存性などを見積もり、ハドロンがマルチハドロン系を構成する際の様子を突き止めた。これらの結果はPhysical Review誌に掲載されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.「2つの異なる対称性におけるハドロン構造の関係に着目した研究」 当初の予定通り研究は遂行されている。
2.「ハドロン内部におけるクォーク相関の研究」 平成28年度は、ハドロン内部におけるクォーク相関を探るための準備計算を行った。どの自由度の相関に着目すべきかを探るため、まずはハドロン散乱におけるカラー自由度の発現の様子をSU(2)格子QCDを用いて解析したが、カラー自由度の中には自明なカラー成分が存在し、その排除が困難であるという問題に直面した。最終的にはこの問題を解決するための手法を考案したが、この問題解決に時間を割かざるをえなくなった。
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今後の研究の推進方策 |
1.「2つの異なる対称性におけるハドロン構造の関係に着目した研究」 平成28年度の研究で、基底状態(負パリティ)Λ粒子の内部構造の決定は高い精度で行うことができた。この手法を他のチャンネル(Σバリオンなど)に適用し、チャームクォークを含むヘビーハドロンの内部構造を(主にダイクォーク自由度に着目し)システマティックに決定する。この際、フレーバー構造の質量依存性などを調べるだけでなく、各種形状因子のクォーク質量依存性の計算も行い、総合的な観点から、ヘビーハドロンの内部構造についての知見を得る予定である。
2.「ハドロン内部におけるクォーク相関の研究」 平成28年度の研究で、マルチハドロン系の解析にはカラー自由度に着目することが有効であることがわかった。しかしながら、これまでの研究はSU(2)QCDの系を用いたテスト計算の意味合いが強い。この手法を現実のSU(3)QCDの系に適用する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度中に研究推進に必要な計算サーバを購入予定であったが、「ハドロン内部におけるクォーク相関の研究」に関する準備計算において、予想していなかった課題に直面し、その解決に時間を費やした。その結果、全体的に進捗に遅れを生じ、計算サーバ購入を次年度に延期した。
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次年度使用額の使用計画 |
研究推進に必要な計算サーバを購入する。また、進捗に遅れた生じたため前年度に実現できなかった研究集会等での発表を行っていく予定である。
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