研究実績の概要 |
当該年度の研究では、2重電荷交換反応により励起される2重スピン-アイソスピン依存励起状態を記述するためのHF理論及び電荷交換型及び電荷交換なしの乱雑位相近似(CXRPA,non-CXRPA)模型、さらにそれを発展させた対相関を取り入れた電荷交換型及び電荷交換なしの準粒子乱雑位相近似(CXQRPA,non-CXQRPA)模型に基ずく、理論枠組みを構築し高速計算機用アルゴリズム及びプログラム作成を行って来た。
この汎用性の高いプログラム開発により、様々な原子核の2重スピン-アイソスピン励起すなわち、2重ガモフ-テラー励起及びスピン双極子型励起巨大共鳴を予言することを目指している。また、理研やイタリアのINFNの実験グループとの共同研究を行い、具体的は実験的な提案をも視野に入れている。
この自己無撞着な理論計算プログラムに2体クーロン力も組み入れることによりアイソスピン多重項の対称性を探る枠組みにも取り組んでいる。また、アイソスカラー型スピン3重項対相関及ぶテンソル相互作用もQRPAプログラムに組み入れる取り組みを進めた。2重スピン-アイソスピン励起状態の実験で得られる定量的な遷移確率を与えるには、このような相関が重要である。さらに、対相関相互作用を取り入れたSkyrme型エネルギー密度関数を用いたHFBおよびQRPAプログラムに、粒子ー振動結合効果(PVC)を取り入れたプログラムを開発する理論的な枠組みを構築した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の一つの大きな課題として陽子-中性子移行型2重電荷交換反応に於ける2重スピン-アイソスピン励起状態の研究とアイソスピン多重項の対称性の検証を行う。陽子-中性子移行型1重電荷交換反応によるスピン-アイソスピン励起状態は、N~Z近傍核では、中性子-陽子移行型励起と同程度の遷移強度を持ち、アイソスピン対称性の検証に重要な役割を果たしてきた。陽子-中性子移行型2重電荷交換は、(18O,18Ne), (8He,8Be), (14C,14O)反応で可能であり2重スピン-アイソスピン励起状態の観測が期待される。陽子-中性子移行型型と中性子-陽子移行型の1重及び2重スピン-アイソスピン励起状態の比較により、アイソスピン5重項の対称性の検証が可能になる。
今年度の研究では、自己無撞着なHFB+CXQRPA理論に2体クーロン力を組み入れアイソスピン5重項の対称性を、まずアイソスピン相似状態で理論的に研究し、実験との協力的な作業によりアイソスピン対称性の新しい次元を確立する。この研究には、2重スピンアイソスピン励起状態を記述する計算機プログラム製作が重要な役割を果たすが、これはすでに開発済みである。
我々はinternet等を通じてのでの国際研究networkにより、当該研究communityからのサポートを得る体制づくりを行っており、研究の理論計算で予言された物理量の実験的な検証の可能性を、理化学研究所やイタリアのINFN原子核研究所の原子核実験研究者との共同で実現を目指す。
|