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2017 年度 実施状況報告書

新素材シンチレーターを用いたK0稀崩壊実験用VETO検出器の基礎開発

研究課題

研究課題/領域番号 16K05368
研究機関山形大学

研究代表者

吉田 浩司  山形大学, 学士課程基盤教育機構, 教授 (80241727)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード粒子線検出器 / カロリメーター / シンチレックス / MPPC
研究実績の概要

平成29年度は主に以下について重点的に研究を推進した。
(1) フォトン・カウンティング・デバイスとして第3世代MPPCを採用する可能性について追及した。この新世代MPPCは、これまでより低い電圧で動作し、クロストークも抑えられノイズも低減されているので、より高精度な位置測定性能をバレル部のVETO検出器に持たせたい次期計画に、省スペース、多CH化、経済性という点で光電子増倍管より好ましいと考えられる。小型のプラスティックシンチレーターホドスコープに装着した試作機を製作し、さまざまな電圧供給読み出し回路及び増幅回路を工夫することによって、優れた時間分解能を実現できることがわかった。また高計数率(< MHz)下で、安定した動作と優れた信号特性を実現できるよう、読み出し回路の改良によるR&Dをおこなった。ピコ秒幅の波長408nmレーザーをMPPCに照射できるライトパルサによるテストベンチを構築し、減衰時間特性及び波形特性に注目しながら試作した読み出し回路をテストした。また回路設計にあたってはLT SPICEを用いたシミュレーションもおこなった。
(2) サンドイッチカロリメーターのシンチレーター部としてPEN以外の素材の可能性を探った。とくに安価な市販品が手に入るPET樹脂について、吸光発光スペクトルの測定や、線源による発光特性についての試験をおこなった。素粒子原子核実験でひろく利用されているプラスティックシンチレーターに比べ、発光性能は劣る結果ではあったものの、(i) 適切な集光系をデザインすること、(ii) 2桁以上安価であることを考え合わせれば、経済性に優れた大型サンドイッチカロリメーターへ応用できる可能性があることを示せた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成29年度は主に以下について研究の進捗があった。
(1) サンドイッチカロリメーターの光学デバイスとして光電子増倍管(PMT)にかわり、第3世代MPPCを採用できる可能性を示せたこと。K中間子稀崩壊実験においては、測定器のすべては真空容器の中に収納しなければならないので、検出器からの一次情報を処理するデバイスは省スペースでなければならない。また、次期計画ではバレル部の検出器にも現行より詳細なγ線位置検出性能を持たせたいので、多CH化は必至である。今回、優れた時間分解能特性のみならず、読み出し回路系の設計を工夫することにより、高係数率下においても信号特性に優れて安定に動作させることが可能であることが示せた。これによりγ線検出部や集光系の種類に依らず、省スペース、多CH化、経済性という点で、新世代MPPCは光電子増倍管以上の汎用性を有することを示すことができた。
(2) ベンチテストやビームテストに向けた機器の整備を着実に進めることができた。サンドイッチカロリメーターは多数の読み出し系を必要とする。光電子増倍管を利用した場合、動作電圧を印加するための電源を必要CH数分用意するのもコストが嵩む。今回、分割回路の大本の高圧電源を自作し、多CHのPMTによるテストを可能にした。また新たにサンドイッチカロリメーターのテストモジュールを支えるフレームを2台製作し、汎用性の高い構造を持たせ、以下のものを入れ換え、検出器の性能を様々な角度から十分に評価できるように準備をおこなった。(i) 金属輻射体 (ii) シンチレーター (iii) ホドスコープ構造を有するシンチレーターやWLS ファイバー等の集光系デバイス (iv) 光電子増倍管やMPPC 等のフォトン・カウンティング・デバイス。

今後の研究の推進方策

前年度にPET樹脂を発光体とした検出器の可能性を探ったが、今後はそれも視野に入れてWLSファイバー集光系のスタディをおこなっていく。従来のシンチレーターに比べて発光領域が紫外よりであるので、それに対応した吸光・発光特性を有するWLSファイバーの応用可能性を探る。高エネルギー物理学の実験では、特に時間応答の早さが要求されるので、現在入手可能な製品が要求性能を満たしているかどうかテストするのに加えて、(株)クラレ社とともに新開発のWLSファイバーの物性(吸光発光特性、時間特性等)をレーザー測定ベンチや放射光実験ライン等で測定する。(物性物理学の研究者の協力を得ながら。)
前年度に輻射体の硬鉛板(含4%アンチモン)やテスト用のフレームを整備したので、PEN, PET, その他の発光体を用いたサンドイッチカロリメーターを試作し、宇宙線や加速器ビームを用いた実用化試験をおこなう。その際には、光電子増倍管だけではなく、本研究での成果を生かして、新世代MPPCを装着した試作機のテストもおこないたい。エネルギー応答の線形性だけでなく、応答速度、時間分解能、位置分解能といった性能について、K中間子稀崩壊実験の次期計画の参考になるデータを収集したい。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] First measurement of coherent double neutral-pion photoproduction on the deuteron at incident energies below 0.9 GeV2017

    • 著者名/発表者名
      T. Ishikawa, H.Y. Yoshida 他
    • 雑誌名

      Physics Letters B

      巻: 772 ページ: 398~402

    • DOI

      10.1016/j.physletb.2017.04.010

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Development of a new photon tagging system for GeV-gamma beam line2017

    • 著者名/発表者名
      Miki Sasaki
    • 学会等名
      2017 IEEE Nuclear Science Symposium and Medical Imaging Conference
    • 国際学会

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公開日: 2018-12-17  

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