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2016 年度 実施状況報告書

アルミニウム-26のアイソマービーム生成と銀河ガンマ線の生成機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K05369
研究機関東京大学

研究代表者

山口 英斉  東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 講師 (30376529)

研究分担者 早川 勢也  東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (00747743)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード宇宙核物理 / 不安定核 / 宇宙ガンマ線 / 核異性体 / 水素燃焼
研究実績の概要

東京大学原子核科学研究センターの低エネルギー不安定核分離施設(CRIB)において、26Mg安定核ビームを使用し、26Al不安定核ビームを初めて生成した。生成エネルギーを巧妙に選択することにより、得られた不安定核ビームの中に、核異性体(アイソマー)が大量に存在することを確認できた。これにより、我々の考案したアイソマービーム生成機構が確かに働くことが実証された。
実際のビーム照射時のガンマ線、ベータ線測定と、線源による較正、検出器の配置を考慮したシミュレーションなどにより、得られたアイソマービーム純度は、26Alビーム全体と比較し、最大約40%であることを決定した。これは期待よりも低い値ではあるが、十分に研究目的を果たすことのできるものである。26Alビーム強度は最大3×10^5 個/秒を達成した。
また、平成29年度に計画していた、アイソマービームを用いた陽子共鳴散乱実験を、予定を繰り上げて平成28年度末に遂行することができた。ビーム検出器、ガンマ線検出器、ポリエチレン標的、反跳陽子検出テレスコープからなる、計画通りの実験装置を組み上げ、全11日間の測定を完了した。反跳陽子検出テレスコープは、厚いシリコン検出器が必要であったが、本科研費により1.5mmのシリコン検出器を含むテレスコープを制作することができた。
測定は、ポリエチレン標的に26Alビームを照射し、散乱により反跳した陽子をテレスコープで検出し、散乱角度・エネルギーを決定するという内容であった。共鳴散乱実験のデータ解析には通常長い時間がかかるが、実験中の解析で、既に共鳴構造らしきものが観測されており、今後の解析により、爆発天体における26Alの破壊反応について重要な知見が得られることが期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

CRIB施設においては、26Alアイソマービームの生成のみならず、26Al不安定核ビームの生成も、本研究が初めての挑戦であったが、実際に生成に成功し、天然存在比が10%程度の26Mgの安定核ビームを使ってもなお、実験に利用できるアイソマー純度・強度を達成できたことは非常に満足すべき結果である。
更に、共鳴散乱実験は、平成29年度に行う予定であったが、加速器実験運用の都合により、予定を繰り上げて平成28年度内に行うという決断をした。結果的に予定通りの測定を完了することに成功し、興味深い議論を生む見込みのあるデータを得る事ができた。
現時点ではアイソマー純度には若干の不定性があり、散乱データの解析も限定的ではあるが、当初の計画より早いペースで研究が進行している。

今後の研究の推進方策

得られたアイソマービームの純度については、約40%という推定は出来たものの、ベータ線測定とガンマ線測定、またビームを異なる材質・厚さの標的に打ち込んだ場合の多様な測定データの間に若干の差異が見られ、統一的な説明ができていない。検出器の検出効率較正データの見直しや、ガンマ線のバックグラウンド差し引き、シミュレーションの精密化により、最大1割程度の精度でアイソマービーム純度を決定したい。
アイソマービーム純度を決定した後、取得した共鳴散乱データの解析を行う。データ解析はこれまでの実績があり、基本的に以前の実験と同様の手順を踏襲する。具体的には、各散乱イベントを運動学的計算によって散乱における重心系エネルギーを導出し、さらに、各エネルギーにおける微分断面積を計算する。微分断面積のスペクトルに現れる共鳴をR-matrixの手法でフィットし、共鳴のパラメータを得る。この際、ビーム粒子の26Al基底状態とアイソマーの混合が問題になるが、基底状態の散乱についてはオークリッジ研究所の散乱実験のデータが存在し、混合比が分かれば差し引きが可能であると考えられるが、実際にデータ解析を進めながら妥当な共鳴パラメータの導出ができるか検討する。
共鳴パラメータの導出が完了した後には、標準的な共鳴公式に従って26Alの破壊反応を定量的に評価し、高温天体の26Al生成量シミュレーションが変更を受けるかどうか判定する予定である。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件)

  • [国際共同研究] 成均館大学/IBS/梨花女子大学(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      成均館大学/IBS/梨花女子大学
  • [国際共同研究] Beihang大学/CIAE(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      Beihang大学/CIAE
  • [国際共同研究] University of Edinburgh(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      University of Edinburgh
  • [国際共同研究] INFN/University of Naples(イタリア)

    • 国名
      イタリア
    • 外国機関名
      INFN/University of Naples
  • [雑誌論文] Experimental investigation of linear-chain structured nucleus in 14C2017

    • 著者名/発表者名
      H. Yamaguchi, D. Kahl, S. Hayakawa, Y. Sakaguchi, K. Abe, T. Nakao, T. Suhara, N. Iwasa, A. Kim, D.H. Kim, et al.
    • 雑誌名

      Phys. Lett. B

      巻: 766 ページ: 11-16

    • DOI

      http://dx.doi.org/10.1016/j.physletb.2016.12.050

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Studying astrophysical reactions with low-energy RI beams at CRIB2016

    • 著者名/発表者名
      H. Yamaguchi, D. Kahl, S. Hayakawa, Y. Sakaguchi, Y. Wakabayashi, T. Hashimoto, S. Cherubini, M. Gulino, C. Spitaleri, G.G. Rapisarda, et al.
    • 雑誌名

      EPJ Web of Conferences

      巻: 117 ページ: 09005 (8 pages)

    • DOI

      10.1051/epjconf/201611709005

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Overview of the activities at the low-energy beam separator CRIB2016

    • 著者名/発表者名
      H. Yamaguchi, D. Kahl, S. Hayakawa, L. Yang, Y. Sakaguchi, K. Abe, H. Shimizu, and CRIB Collaboration
    • 雑誌名

      Il Nuovo Cimento

      巻: 39C ページ: 358 (5 pages)

    • DOI

      10.1393/ncc/i2016-16358-x

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Explosive destruction of 26Al2016

    • 著者名/発表者名
      D. Kahl, H. Yamaguchi, H. Shimizu, K. Abe, O. Beliuskina, S. M. Cha, K.Y. Chae, Z. Ge, S. Hayakawa, M.S. Kwag, D. H. Kim, J. Y. Moon, S.Y. Park, L. Yang
    • 雑誌名

      Il Nuovo Cimento

      巻: 39C ページ: 362 (5 pages)

    • DOI

      10.1393/ncc/i2016-16362-2

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] First direct measurement of the 11C(alpha,p)14N stell ar reaction by an extended thick-target method2016

    • 著者名/発表者名
      S. Hayakawa, S. Kubono, D. Kahl, H. Yamaguchi, D.N. Binh, T. Hashimoto, Y. Wakabayashi, J.J. He, N.Iwasa, S.Kato, T.Komatsubara, Y.K. Kwon, T.Teranishi
    • 雑誌名

      Phys. Rev. C

      巻: 93 ページ: 065802 (8 p.)

    • DOI

      10.1103/PhysRevC.93.065802

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Overview of recent experiments at CRIB2016

    • 著者名/発表者名
      H. Yamaguchi
    • 学会等名
      SKKU mini workshop
    • 発表場所
      Sungkyunkwan University, Suwon (South Korea)
    • 年月日
      2016-10-11
    • 国際学会
  • [学会発表] Recent activities at the low-energy RI beam separator CRIB2016

    • 著者名/発表者名
      H. Yamaguchi
    • 学会等名
      RIBF users meeting 2016
    • 発表場所
      理化学研究所(埼玉県和光市)
    • 年月日
      2016-09-08 – 2016-09-09
    • 国際学会
  • [学会発表] Overview of CRIB projects2016

    • 著者名/発表者名
      H. Yamaguchi
    • 学会等名
      The Second Sicily-East Asia Workshop on Low Energy Nuclear Physics (SEA2016)
    • 発表場所
      東京大学原子核科学研究センター(埼玉県和光市)
    • 年月日
      2016-06-27 – 2016-06-28
    • 国際学会
  • [学会発表] Experimental studies of light-ion nuclear reactions using low-energy RI beams2016

    • 著者名/発表者名
      H. Yamaguchi
    • 学会等名
      The 14th International Symposium on Nuclei in the Cosmos (NIC-XIV)
    • 発表場所
      朱鷺メッセ(新潟県新潟市)
    • 年月日
      2016-06-19 – 2016-06-24
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Study on alpha-cluster levels in non-4n nuclei using low-energy RI beams2016

    • 著者名/発表者名
      H. Yamaguchi
    • 学会等名
      11th International Conference on Clustering Aspects of Nuclear Structure and Dynamics
    • 発表場所
      Universita di Napoli Federico II, Napoli (Italy)
    • 年月日
      2016-05-23 – 2016-05-27
    • 国際学会

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公開日: 2018-01-16   更新日: 2022-02-16  

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