研究課題/領域番号 |
16K05372
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
奥村 公宏 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (70361657)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 加速器ニュートリノ / 大気ニュートリノ / ニュートリノ振動 / ガドリニウム / 中性子検出 / 反ニュートリノ識別 |
研究実績の概要 |
本研究では、スーパーカミオカンデ(SK)の次期計画であるSK-Gdにおいて、T2K長基線ニュートリノ振動実験、および、大気ニュートリノ測定に対する物理的インパクトを研究する。SK-Gdでは硫酸ガドリニウム(Gd)をSK内の純水に0.2%溶解することにより、ニュートリノ相互作用による反跳中性子を高効率で識別することが可能となり、特にニュートリノと反ニュートリノ反応を識別する能力が向上すると期待される。本研究では 1. モンテカルロシミュレーションを用いた詳細な中性子検出効率、および、反ニュートリノ識別能力の評価、2. ガドリニウム水による水の透過率低下、さらに、検出器性能への影響を測定する装置の開発、3. ニュートリノ・反ニュートリノ識別によるニュートリノ振動測定、特にCP非対称性や質量階層性への感度向上に対する評価、を行うことを計画している。 これらのうち初年度の研究実績は、主に 1. のSK-Gdのモンテカルロシミュレーター、および、反跳中性子信号の検出アルゴリズム開発について行い、光電子増倍菅のヒット時間と数によるシンプルなアルゴリズムを用いて評価した。そしてガドリニウム吸収によるガンマ線信号の検出効率はおよそ85%、さらにバックグラウンド率が5%であることを評価した。検出効率はニューラルネットなどの高度な識別アルゴリズムを使用すればさらなる向上は可能であると考える。今後はT2K実験でのシミュレーションに適用し、中性子識別による効果を検証する予定である。そして 3. における反ニュートリノ識別の研究に応用していきたいと考える。2. については現時点で未達成である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請研究項目の1つであるチェレンコフイメージング性能測定装置の開発が遅れている。この装置を開発にあたっては、装置の簡単な光学シミュレーション、チェレンコフイメージを作り出すDLPチップの制御などが必要だが、今年度はSK-Gdシミュレータの開発に忙しく、その辺りの研究開発が進んでいない。また性能測定装置の開発には、装置の光学系を設計する業者の選定も進めなければいけないが、それについてもまだ業者を見つけることができていない。
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今後の研究の推進方策 |
SK-Gdシミュレータの開発は順調に進んでおり、幾人かの研究者と協力して進められるような体制は整いつつある。今年度はまずT2K実験で期待される効果をモンテカルロシミュレーションデータを用いて評価する予定であり、現在、シミュレーションコードの詳細なチェック、Gd吸収によるガンマ線信号を検出するアルゴリスムなどを整備し、実際に解析を行う予定である。 また同時にチェレンコフイメージング性能測定装置の開発を推し進める予定である。装置の光学シミュレーションを行い、DLPチップの必要な画素数や光学系の要求性能を評価し、それを満たす装置を作成可能な業者を選定する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度計画されていた予算が今年度に使用することになった理由として、チェレンコフイメージング測定装置の開発が遅れたことによる。昨年度では本科研費の他研究項目を進めており、装置製作に必要な仕様を導出することができず試作品を作成できなかった。それについては本年度進める予定であうる。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は上記のチェレンコフイメージング測定装置開発を進める。年度前半に必要な仕様を作成、同時に装置製作業者の選定をすすめ、試験機の製作について年度後半に製作デザインを完成させ発注させる予定である。
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