研究課題/領域番号 |
16K05373
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉越 貴紀 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (30322366)
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研究分担者 |
大石 理子 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (10420233)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 宇宙線(実験) |
研究実績の概要 |
本研究では、解像型大気チェレンコフ望遠鏡(IACT)群と呼ばれる超高エネルギー天体ガンマ線観測装置を用い、宇宙線エネルギースペクトルの特徴的な構造であり宇宙線物理学の長年の謎である"knee"の起源を、以下の2つのアプローチで探求する。 (1)稼働中の観測装置である米国アリゾナのVERITAS IACT群を用い、現行装置規模における最高感度でknee領域に関わる天体ガンマ線(10 TeV以上)を観測する。特に、kneeの起源として有力視されている超新星残骸(SNR)を大天頂角観測法で観測し、起源の兆候を調べる。 (2)次世代大型IACT群計画CTAは、天体ガンマ線観測感度を現行装置より一桁改善する。本計画を国際協力の下で推進しつつ、その豊富な観測データを活かした10 TeV以上で効果的な新規データ解析手法を開発し、CTAの本格稼働に備える。 平成29年度はVERITASの観測シフトに参加し、上記(1)の標的として最も有力なSNR、RX J1713.7-3946(以後J1713)の観測の実現可能性について調査した。その結果、J1713が観測サイト周囲の山に遮蔽されることはなく観測は原理的に可能であるが、望遠鏡の通常運用の範囲を超えた大天頂角領域をJ1713が推移するため、望遠鏡制御に関する技術的な調査が必要であることがわかった。この事実を反映したJ1713の観測提案書をVERITASグループに提出したところ、本番観測実施前のさらなる準備研究を推奨する旨の回答を得た。現地技術者の協力の下望遠鏡の天体追尾プログラムを改変し、超大天頂角領域を安全に観測できることを確認した後、標準天体であるかに星雲の超大天頂角観測を実施した。この較正用データと超大天頂角観測のシミュレーションによってJ1713の観測計画を補強し、更新した観測提案書を次年度に再提出して本番観測を実現したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
「研究実績の概要」中の項目(1)では、標的天体の観測実施前に必要な準備研究が、種類・内容量共に当初計画より増加したため。 同項目(2)では、将来CTAで使用される公式データ解析ソフトウェアの仕様が大幅に変更され、その開発および習得に時間を要していることが一因である。必要な作業量の増加分に比べて人手が足りていないことも課題である。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」中の項目(1)では、平成29年度に取得した較正用データと今後生成する超大天頂角観測シミュレーションデータの解析を進め、その結果を反映して補強したJ1713の観測提案書を再提出する。その後本番観測を実現し、観測データを解析して、kneeの起源を探索する。 同項目(2)では、研究の方針自体に変更はないが、今後は外部の協力者を探すことも検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:研究計画が遅れていて、予定していたデータ解析用計算機の増強を実施しなかったため。また、外国旅費については他の予算を利用することができたため。 使用計画:外国旅費(VERITAS、CTAミーティングの参加旅費等)として使用する他、平成28年度に購入したデータ解析用計算機の周辺機器等を増強する。
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