研究課題
平成28年度は太陽中性子イベント2例の解析結果を論文としてまとめた。一つの論文は2014年7月8日のフレアに係るもので、加速された陽子が太陽表面に衝突し作り出した中性子の解析結果に基ずいている。今期の太陽活動期から太陽表面を131nmの紫外線望遠鏡を用いて常時観測しているNASAのSDO衛星による画像データと比較して議論できるようになった。合わせて解析した結果、太陽表面で2個の磁気ループがX状に衝突をした時、高エネルギー陽子が加速されていることが判明した。またこの仕事をSolar Phyics 291(2016)124pに発表した。もう一つの論文は、2012年3月5日のフレアに関するもので、宇宙ステーションに搭載された太陽中性子検出装置が、きれいな中性子信号を受信した。このイベントを詳細に解析した結果、上のイベントと同様に2個の磁気ループがX状に交叉した時と、新たにY状にside by sideで衝突した時に、陽子が高エネルギーに加速されることが分かった。内容はまもなくSolar Physicsに公表される。また2016年12月26日03:38:54 GPS timeに35MeVのガンマ線を宇宙ステーションに搭載した我々の装置が検出した。この時刻はLIGO重力波検出チームが重力波を検出した時刻に一致していた。しかしGPS timeとUTの間に時差が数秒あるため、同時受信とは発表できなかった。詳細はarXiV:1611.09514に公表した。また太陽ダイナモ機構について新説を考え、日本物理学会(大阪大学)で発表した。太陽内部のプラズマの運動が2組のloopの運動で記述できる。振動周期がわずかに異なる2個の磁気ループの連成振動で、89年周期のGleissberg周期が自然に説明できることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度は、一個の論文をレフリー付きジャーナルに掲載した。また今までの観測のまとめとなる論文も現在レフリー付きジャーナルに投稿中である。レフリーは掲載に好意的であり、まもなく公表されるだろう。2010.6.2 eventと2011.9.6 eventを解析するために必要な太陽方向を解析画面に同時に表記するソフトをH28年度に完成させ、より効率的に太陽中性子の解析ができるようになった。これら両イベントは直流電場加速で生成されていると想定されるが、研究成果をレフリー付きジャーナルに発表するために必要な太陽表面からのガンマ線や中性子の発生角度分布のモンテカルロシミュレーションは現在進行中であり、当初の目標(公表)を実現するための準備はおおむね順調に進行している。
平成29年度はメキシコとチベットで得られた太陽ガンマ線の解析を実施し、H29年7月に釜山で開催される第35回宇宙線国際会議で発表すととともに、それらを論文としてまとめ、レフリー付きジャーナルに掲載を目指す。2011年3月7日にメキシコの高山に設置されている太陽中性子望遠鏡には中性子の信号の他にガンマ線の信号も含まれていることが分かった。また同時に宇宙ステ―ションに設置されている太陽中性子観測装置にも強い信号が受信されている。もし太陽からのガンマ線であることが証明できれば、世界初の太陽からのガンマ線を地上観測装置で受信したことになるので、その証明に全力を挙げる。また2012年6月3日には宇宙ステーションで強い太陽中性子の信号を受信した。しかしこのフレアはわずか1分間のみ1000倍にX線領域で輝いた非常に特殊なimpulsiveなイベントである。陽子の加速を考える上で非常にユニークな事例となっているので、このイベントを解析してそれらをまとめてレフリー付きジャーナルに掲載を目指す。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件)
Solar Physics
巻: 291 ページ: 1241-1265
10.1007/s11207-016-0887-0